コンコン 「入れ」 「御機嫌よう、綱手姫、シズネ嬢」 「アリスか」 「お疲れ様です」 ドアをノックして入ってきたのは任務から帰ってきたアリス。とある大名の城から巻物を盗んでくるという仕事を終えた彼女は幾分か疲れた表情をしていた。 「すまないな、立て続けにランクの高い任務を入れてしまって」 「上忍クラスを多く出払っている時期だから仕方ないわ」 「でも珍しく疲労が顔に出ていますよ。睡眠時間も少ないようですし、少し休まれた方が・・・」 アリスの顔色を見て心配するシズネに、綱手も「そうだな」と同意する。 「暫く休暇を取れ。お前が倒れると私が責められる」 「綱手姫ったら。そう言われてしまえば休む他なくなるじゃない」 「それが狙いだ」 口角を上げる綱手にアリスは肩を竦めて、休暇を取ることを承諾した。 「ゆっくりお休みください」 「ありがとう。何かあれば呼んでちょうだい」 ニッコリ微笑んで、出ていこうと踵を返した。 その時─── ドオォーン!! 「「「!!?」」」 遠くの方で爆発音が鳴り響く。慌てて窓に駆け寄り外を見渡せば里を囲う壁の一角から煙が上がっていた。 「敵襲か・・・!」 「よりにもよって上忍を多く出払っているこの時に・・・」 「何処の輩でしょうか」 「失礼します!」 執務室に現れた木ノ葉の忍。綱手は「何があった!?」と少々焦りの表情を浮かべて忍に問う。 「久我という抜け忍が五十人程の忍を引き連れて里を襲撃!応戦中ではありますが恐らく長くは持たないかと・・・至急応援を!」 霧隠れの抜け忍・久我。殺しを生業(ナリワイ)としており、残虐かつ冷酷な行為が目立つS級犯罪者。 木ノ葉を責めてきたのも里に恨みを持つ誰かに依頼されたのだろう。 「綱手姫、行くわよ」 「あぁ」 「お二人共出るのですか!?」 「あれは木ノ葉を潰そうとしているわ。ならば狙いは火影である綱手姫。上を落とせば下を落とすのも楽になるから」 「ここで戦闘になれば被害が大きくなる。適当に開いてるところへ誘い込んで倒すしかないだろう。シズネ、ここは任せた!」 口早にそう言って二人は窓から飛び出した。 久我に居場所を晒すが如く屋根の上を通って移動する二人は途中まで来ると二手に分かれる。 綱手は周囲に人がいない演習場へ。アリスは爆発が起きた場所へ。 久我勢力が押し入ってきたという所にアリスが到着した頃には双方の忍が激戦を繰り広げていた。 木ノ葉の方が数は多いものの、下忍中忍が多いために苦戦を強いられている。アリスは走った勢いに任せて戦場に飛び込むと手近なところから次々と敵を切り裂いていった。 「アリス様!」 「遅くなったわね」 「皆!アリス様のご到着だ!!」 その言葉に木ノ葉の忍はアリスを見遣り、敵も急に数が減ったことに驚いてその原因を視界に入れた。 当人と言えばいつもの可愛らしい雰囲気は影を潜め、その双眸に物騒な光を宿している。 独特の威圧感を醸し出す彼女は辺りを見渡して息を吸った。 「このわたくしが加勢する!これ以上奴等を木ノ葉の地に踏み込ませるな!!」 「「「オオォー!!」」」 歓声が上がり士気が高まった忍達が敵に突っ込んでいき、アリスも影分身をして戦場に身を散らばらせた。
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