番外編 | ナノ

天気のいい午後三時頃。修行を終えたアリスは商店街を歩いていた。

因みに猫面とローブを外してからというもの、また別の意味で周りの視線が集まりすぎるということで人の多い所では笠を被るようになった。

目指すは木ノ葉でも美味しいと評判でアリスもよく行く甘味処。なんでも中忍試験に因んで期間限定商品を出すらしい。


「いらっしゃいませー」


店員の声を聴きながら辺りを見回すと程々に混んでいる店の中で向かい合って席につき、団子を食べている懐かしい二人組の姿を見つけた。

笠を被っていて顔は良く見えないが微かに聞こえる声からして間違いないだろう。

アリスは店員に期間限定商品である“五色団子(忍五大国が由来)”を注文すると、その二人組に近付いた。


「そこの御二方、少々よろしいかしら」


声と気配に、かつて敵対し波の国で激戦を繰り広げた鬼人と雪の少年──再不斬と白が顔を上げた。


「・・・なんだ」

「あぁ、やはり貴方達だったわね。久しいこと・・・」

「?、どこかでお会いしましたか?」


怪訝そうに眉を顰めた再不斬に代わって白が言葉を紡ぐ。

その問いに「えぇ」と返事をしながらアリスは徐(おもむろ)に目深に被っていた笠を上げた。

ひどく整った顔(かんばせ)に二人は目を見張る。


「・・・波の国では面をしていたから顔で判断出来ないのは仕方ないけれど、こうして会話をしているのだから気づきなさい。それとも貴方達は数ヶ月前に会った相手の事も覚えていられない程かわいそうな頭の造りをしているのかしら」

「!、その、口調と言回し・・・!」

「もしかしてアリスさん、ですか?」


出された答えにアリスが頷くと、二人は石造よろしく数秒間固まった。


「──五色団子お持ちしました」


店員の声で我に返った二人は、いつの間にか白の隣に座って運ばれてきた団子を口に運ぶアリスに目を向ける。


「まさかあの黒ずくめがお前だったとはな・・・。つーか相変わらずの傲岸不遜と毒舌だな。カカシの苦労が目に浮かぶ」

「余計なお世話だわ。それよりも何故貴方達がここにいるのかしら。本戦前で他国からの客人を招き入れているとはいえ、警備が疎かになっているわけではないはずよ」

「実は僕達、任務でこの里に来たんです」


白の答えに「任務?」と聞き返すアリス。


「あぁ。本戦を見に行くっつー大名の護衛任務だ」

「まぁ・・・鬼人と名高い貴方を護衛になさるだなんて、よほど人手が足りていないのか、それとも依頼人自身に後ろめたい部分がおありなのか・・・。兎も角、それで比較的簡単に里へ入れたのね」

「はい。・・・あ、あの、よかったらこの後散歩でもどうですか?」


どうやら護衛の任務は交代制らしく、白達は夕方まで時間が空いているのだとか。

特に断る理由もないため了承後、お金を払って三人で外に出た。


「──そういえばアリスさんは本戦出るんですよね。あとナルト君とサスケ君も。トーナメント表に載っていました」


道を歩きながら思い出したように白が口を開く。再不斬も気になるようでアリスに視線を向けた。


「ま、お前の強さなら上位にいけるだろ」

「フン・・・当然だわ。上位どころか全員地に沈めて差し上げてよ」


物騒な物言いに再不斬は呆れたように溜め息を吐き、白は苦笑いを零す。

そんな何気無い会話を交わしながら暫く歩いていると後方の少し離れた所からアリスを呼ぶ声が聞こえた。

振り向いた三人の目に映ったのは、ゆったりとした歩みで近づいてくるカカシ。


「いやぁ、アリスって笠被ってても後ろ姿でも、髪が目立つからすぐに発見できていいね」

「・・・褒め言葉として受け取っておくわ。それよりもわたくしに何か?」

「いやいや、アリスが人と歩いていたから珍しいと思って声かけただけ」

「そう。・・・せっかくの再開なのだから挨拶位してはいかが?」


突然の提案にカカシは首を傾げ、二人は被っていた笠を顔が見える程度まで持ち上げる。


「!、お前等・・・」


ひどく驚いた様子のカカシを見て再不斬は愉快そうに喉を鳴らして、白が「お久しぶりです」と微笑んで挨拶をした。




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