「じゃぁ皆!今回のテスト内容を発表するわよ?」 色の授業を担当する妖艶な女性──色花カレン(イロハナ カレン)。 火影の人柄か木ノ葉ではその面の任務は少ないが、それでもやはりあるわけで。 御年二十代後半の彼女は流石色任務のエキスパートとでも言おうか、非常に見目麗しい。 そんなカレンの授業では今日(コンニチ)、くノ一クラスの誰もが必死になるテストが行われようとしていた。 その理由は勿論テストの内容のこともあるが、正直恋する乙女たちにとってそこはあまり重要ではない。 「今回の課題は男の子の家に行って、又は自分の家に招いて一緒にクッキーを食べること。勿論手作りクッキーよ」 そう、重要なのは─── 「相手はいつも通りクジで決めるわ。並んで箱の中の紙を一人一枚ずつ取ってね」 一緒にクッキーを食べる相手だ。 言うまでもなく乙女達のターゲットはうちはサスケ。 我先にとクジが入っている箱に群がる。 そんな中、その光景を冷めた目で見ている少女と、あまりの勢いに入って行けない少女が少し離れたところに待機していた。 「えっと、アリスちゃんは取りにいかないの・・・?」 「わたくしがあの中に?冗談ではないわ。餓死寸前の肉食動物が一つのエサを奪い合うかのような気品の欠片もない馬鹿馬鹿しい騒ぎに付き合うつもりはなくってよ」 「み、みんな、サスケ君とペアになりたいんだよ。テストの時はいつもこんな感じだよ」 そうして話していると、クジを引いていた集団から悲鳴のような歓声が起こった。 「やったあああぁぁ!!!サスケ君よ!!!!」 その声量にアリスは顔を顰める。 女子達が羨ましそうに“うちはサスケ”と書かれたクジを掲げているイノを見ていた。 「酷い浮かれようね」 「他の女の子でもあんな感じだよ。でもイノちゃん大丈夫かな・・・」 不安そうにイノを見ているヒナタに、アリスは首を傾げる。 「何かあるの?」 「う、うん。今までもテストやってきたけど・・・サスケ君がペアになった子は成功したことがないの。毎回断られちゃうみたいで・・・」 「そう、それは災難ね」 ────────── 暫くすると空いてきたため、二人もクジを引くために列に並んだ。 アリスは順番が回ってくると特に迷いもせずにさっさと引いて席へ戻る。 折りたたんである紙に書いてあったのは─── 「ナルト・・・」 “うずまきナルト”の文字。 別に誰であろうが構わないが、やはり気心知れた者が相手だとやりやすい。 アリスは微かに口角を上げた。 「みんな引いたわね?期限は来週の今日までで証拠写真を撮って提出。勿論ツーショットよ」 ニッコリ笑うカレンに返事をする子供達。 まぁそんなに難しいことではないだろう。 作ったクッキーをどちらかの家で一緒に食べて証拠写真を撮ってくるだけだ。 男子達も今までの経験から大体“色の授業の課題だな”ということは推測できるだろうし、美味しいものが食べられるなら写真に写るくらいどうということはない。 強いて言えばどちらかの家に行かなくてはならないことくらいか。 「───あ、それと忘れていたけど普通に食べるだけじゃつまらないから“あーん”で食べさせてあげてね!」 ・・・前言撤回。今のサラッと言った一言でハードルがグンと上がった。 少女達は一瞬の間をおいて騒ぎ出す。 普通に食べるだけならまだしも(まぁそれも無理そうな男子もいるが)ここにきてまさかの“あーん”。 しかもその光景を写真に収められるという羞恥。 この年になってやってくれる男子は果たしてどのくらいいるのだろうか。 成功率80〜90%と思われた課題が、一気に失敗率80〜90%に跳ね上がった。 「サ、サスケ君に、あーん・・・きゃー!!」 「調子のってんじゃないわよイノブタァ!」 「あら、嫉妬かしらぁ?デーコリーンちゃん!」 「きー!アンタごときが作ったクッキーをサスケ君が食べてくれるわけないでしょー!」 ぎゃいぎゃい騒がしい教室。 サスケとの時間を思い浮かべて有頂天になっているイノ以外が不安げな顔をしていた。 ・・・否、イノとアリス以外の女子が、だ。 「アリスちゃん、大丈夫?初めてのテストなのに・・・」 「フン、ただクッキーを食べさせて写真を撮ればいいだけの話でしょう。しかも相手はナルト。難しいことはないわ」 「そ、そっか・・・。がんばろうね」 オドオドしながらもそう言ったヒナタだが、フとある疑問が浮かんだ。 「(・・・そういえばアリスちゃんってクッキー作れるのかな?)」
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