レジに持っていくと店の奥から店主が出てくる。 ・・・がナルトを見て思いっきり顔を顰めた。 「なんでここに化け物がいるんだ!?」 キッと睨みながら強い口調で言う。 「買い物に来ただけだってばよ!ほら!」 ナルトが持ってきた商品を指差した。 しかし店主はそんなこと関係ないとばかりに何やら喚き散らしている。 そんな騒ぎに通りを歩く人々が何事かと集まってきた。 ナルトの姿を見ると揃いも揃って嫌そうな顔をする。 いがみ合う二人だったが先に身を引いたのはナルトだった。 言葉が尽きたとかそんなことではない。 隣から確かな苛立ちを感じ取ったからだ。 「───もう終わりか?ん?化け物は化け物らしく檻の中にでも入ってれば良 「貴様はいつまでわたくしを待たせるつもりなのかしら」・・・は?」 我慢できなくなったアリスがとうとう口を開いた。 ここで漸くアリスに目を向けた店主だったが今にも目に見えてきそうな黒いオーラを感じて顔を引きつらせる。 「聞こえなかったの?わたくしはいつまで客人を待たせるつもりか、と言ったのよ。売る気がないならさっさと店仕舞いでもしてはいかが? まったく・・・貴様のような取るに足らない存在がわたくしを待たせるなんて烏滸がましいにも程があるのよ。 本来なら地を這いずり回っているはずの物体が、人間の皮を被って商売までしないでいただけて? わたくしが貴様と同じ人間だと位置付けられるなんて恥以外の何物でもないわ」 「ま、まぁまぁ。落ち着けってばよ・・・」 スラスラと店主を罵倒するアリスを宥めるナルトだったが、まだ怒りが収まらないのかアリスは周りを見渡してさらに口を開いた。 「それと、わたくしにはナルトを化け物だと罵っている貴様等の方が余程化け物に見えてよ。ご自分のことを棚に上げてよくもまぁ好き勝手言えるものね。 貴様等がナルトに言ってきた言葉は全てそっくりそのまま返ってくることに気づきなさい。あぁでも、ナルトと貴様等のような蛆虫共を同等に扱うなんてナルトに失礼ね。いえ、これでは蛆虫にも失礼だわ』 アリスはここまで言い切ると再び店主に向き合ってドンッ、とカウンターに拳を振り下した。 その威圧的な雰囲気と行動に店主が「ヒィッ!」と情けない声を上げる。 「して、貴様はこの商品を売るのかしら、それとも売らないのかしら。売らないのならばわたくしが今すぐこの店を閉店に追い込んで差し上げてよ。売るなら・・・いえ、それ以前の問題で貴様は客であるこのわたくしに無礼を働きすぎたわ。この場合、頭を地に付けて謝罪し侘びの品を持たせるべきではなくて?」 「は、はい!すぐに・・・!」 そう言って急いでアリスが持ってきた忍服を包装し始めた。 「──お、お待たせしました・・・」 蒼い顔のままそう言って差し出された袋をアリスはナルトに受け取るよう促した。 ナルトにそれを渡した後、店主はキッカリ90度に身体を折って「申し訳ありませんでした」と震える声で謝罪する。 アリスはそれを鼻で笑い、ナルトは最早同情の目で見て店を後にしたのだった。 〜オマケ〜 帰り道にて・・・ 「ナルト、買い物というのは中々に楽しいものね」 「あー・・・あれは買い物というより脅 「え?」イエ、ナンデモアリマセン」 先程の店主と野次馬の様子を思い出して少し青ざめるナルト。 「(あれを買い物と呼んでいいのか?最後の方とか店のおっちゃんなんて涙目だったってばよ・・・!まぁ確かにアリスの言葉ってグサッと来るし雰囲気とかもアレだけどさ。・・・やっぱりアリスにちゃんとした買い物の仕方おしえるべきか?)」 一人悶々と考えていると、少し先を歩いていたアリスがフと振り返って『どうかした?』と問うてきた。 「いや、なんでもないってばよ!それよりさ、アリス!さっきオレのこと庇ってくれてありがとな!かっこよかったってばよ!」 「・・・フン、わたくしは正論を言ったまでよ。感謝されるほどのことではないわ」 いきなりのお礼にアリスは猫面の下で軽く目を見張ってからそう答えた。 ナルトが改めてアリスの機嫌は損ねるべきではないと学んだある一日の出来事。
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