Dear 我愛羅 ご機嫌麗しく。お久しぶりね。 長らく連絡を取れなくてごめんなさい。噂が出回っていたようだからご存知だと思うけれど、少し里を空けていたのよ。 その後も任務で忙しくて中々時間が取れなくて・・・。でも漸く手が空いたから、今更ではあるけれど近々そちらへ遊びに行こうと思っています。 同盟を組んでいるとはいえ、わたくしは忍だから砂の里に入るには少し時間がかかるかもしれないわ。滞在日数も二泊三日の予定よ。 短い時間ではあるけれど会えるのを楽しみにしているわね。 では、御機嫌よう。 From アリス ────────── ──────── ────── そんな手紙を送って一週間とちょっとが過ぎた頃、アリスは砂の里付近の砂漠を走っていた。 「砂隠れって気候が厳しいのね・・・」 照りつける太陽と砂嵐に苦戦をしながらも何とか入り口まで辿り着く。 番をしていた忍に文通時に同封されていた通行書を見せて中に入れてもらった。 上役への挨拶を済ませて建物の外に出れば、壁に寄りかかってアリスを待っていた我愛羅の姿があった。 「我愛羅! ご機嫌麗しく。久しいわね」 「あぁ。漸くゆっくりする時間が出来たというのにすまない」 「気にしないで。砂には一度来てみたかったもの」 小走りに我愛羅の下へ行けば、少し見上げる形になることに気付く。 「まぁ...我愛羅ったら、わたくしより大きくなったのね。最後に会った時は少しだけ貴方の方が低かったのに」 「男女の差ということもあるだろう。別段お前が低いわけではない」 フイ、と目をそらす我愛羅。アリスは木ノ葉で見た男子陣の反応と同じ反応を見て呆れたように肩を竦めた。 「やはりこの忍服は止めた方がいいかしら。サスケに怒られたのよ」 「いや、その・・・に、似合ってはいる。というより、お前自身抵抗はないのか」 「パーティなどで慣れているのよね。ただ足を出すのはNGだったから、わたくしとしてはそちらの方が気になるわ」 困った顔で言うアリスに我愛羅は「そういうものなのか」と納得した表情になる。 話が一段落したところで二人は我愛羅の家へ向けて歩き出した。途中、女の子達の黄色い声が聞こえてくる。 「我愛羅、貴方の位置づけも随分と変わったようね」 「アリスのアドバイスのお蔭だ」 「途中で途切れてしまったけれど」 そんなことを話しているうちに段々と大きくなっていく騒ぎ。「賑やかね」と微笑むアリスだが、我愛羅は小さく首を振った。 「アリスがいるからだろう。この二年程で忍界のトップクラスに入ったからな」 「ひたすら任務をこなしていたら、いつの間にか名が広まっていたのよ。忍なのに忍べなくなるから困ってしまうわ」 「・・・残念だが、お前は初めから忍んでいたことはなかったと思うぞ」 我愛羅の言葉に黙り込むアリス。確かに一般の忍に比べて姿もやることも派手だ。 ナルトとはまた別の意味で印象に残りやすいタイプだと言えるだろう。眉を顰めて息を吐く。 「・・・生まれのせいかしら。気を付けているけれど無意識にやってしまうのね」 「だがそれが役に立つことも多かっただろう」 「そうなのよ」 注目を集めたまま歩いて暫く、我愛羅達兄弟が住む家に到着した。扉を開けた彼に促されて中に入ればトトト...と二人分の足音が近づいてくる。 「──久しぶりじゃん!アリス」 「よく来たな。我愛羅とも合流出来て良かったよ」 「ご機嫌麗しく。二泊三日、世話になるわ」 簡単な挨拶を交わした後リビングへ移動する四人。テーブルに着いて用意されたお茶を喉に流したアリスは軽く部屋を見渡した。 「木ノ葉とは随分と造りが違うのね」 「あぁ、ここは砂嵐がよく起こるからな。気候に合わせた造りになっているんだ。慣れないかもしれないが我慢してくれ」 「大丈夫よ。これもまた良い経験になるわ」 申し訳なさそうに説明するテマリにアリスはそう返して窓の外を見る。今は穏やかな風が吹いているくらいだ。 彼女の視線に気づいた我愛羅が口元を少しほころばせた。 「アリス、一休みしたら里を案内しよう」 「おい、今日行くのか?長い距離走ってきたんだし休んだ方がいいじゃん」 「いいえ、いいのよカンクロウ。二泊三日という短い滞在時間だもの。行動しなければ損よ」 「ま、それもそうだな」 期待の表情でお茶を飲む彼女に小さく笑うテマリ。自分は育った里だからどうとも思わないが、やはり他国の人間にとっては興味深いのだろう。 暫くしてお茶もお菓子もなくなった頃、アリスは立ち上がって我愛羅に目をやった。 「我愛羅、行きましょう。何があるか楽しみだわ!」 「そう急ぐな。それよりアリス、荷物はどうした」 会った時から完全なる手ぶらであったアリスだが何も持ってこなかったということはないはず。 となるとまた魔法だろうか。 「あぁ、荷物ならここに──」 袖に手をかざせばボンと音と煙を立ててカバンが出てくる。どうやら今回は忍術らしい。 「へぇー、便利なものだな」 「楽でいいじゃん」 「そうなの。それに紛失する心配もないからかなり利便性の高い術だと思うわ」 「客間まで持っていこう」 ス、と荷物を掠めて歩き出す我愛羅をアリスが止めるも、客なのだから、と一蹴されてしまう。 ついでに家の中の案内をしてから二人は外へ出た。
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