「おはよう、ヒナタ。早いわね」 「あ・・・お、おはよう、アリスちゃん」 商店街の入り口に立っていたヒナタが歩いてきたアリスに顔をほころばせる。 帰還から随分と経ってあの騒動も過去のことと思えるようになった今日この頃、アリス達くの一は忍服を新調しようということで商店街に集まっていた。 二人で暫く待っていればイノとサクラ、そしてテンテンがやってくる。 「よっし!それじゃ行くわよ!」 「「おぉー!」」 「お、おぉー・・・!」 イノの言葉に元気に返事をするサクラとテンテン。ヒナタも控えめに混ざり、アリスはその様子を微笑ましげに眺めていた。 ガールズトークを交えながら歩いていると程なくして木ノ葉では最も品ぞろえが良いと言われている忍服店に到着する。 忍と言えど女の子は女の子。どんな服を買おうかと彼女達は胸を躍らせていた。 「さてと・・・どうしよっか。皆バラバラに探す?」 「うーん、せっかく皆で来たから順番に選んでいくというのはどうです?」 「あ、それいいわね!」 「なら班の番号順に選んでいきましょう」 サクラとテンテンで出した結論にアリスが手っ取り早く案を出す。それが採用されてトップバッターはテンテンだ。 「テンテンさんと言えばやっぱりチャイナ服よね!」 「あ、この赤のトップス可愛い」 「本当だ。いいじゃないですか!下はどうします?」 「んー・・・今はどっちかというと木の葉の忍服に近い形だから、次はもうちょっとダボッとしたのがいいかなー」 考えながらガサガサと商品を漁っていく。途中、良さそうなものを見つけたらしく手を止めてそれを引っ張り出した。 「ね、これどう!?」 「い、良いと思いますっ」 「でも赤ね・・・。上か下のどちらかを違う色に変えた方がいいと思うわ」 「そっかー。どうしよっかなー・・・」 悩みながら再び商品棚を見て回るテンテン。 「・・・ねぇ、テンテン」 「なに?アリス」 「このトップス、色違いがあるみたいだけれどそちらはどう?」 「どれどれ?・・・あ、この白の良いかも」 アリスに言われて違う色を手に取ったテンテンが顔を明るくする。上下を持って鏡に合わせると納得したように一つ頷いた。 ついでに近くにあった指先の出る手袋を手に取って、これで決定らしい。 「じゃ、次は七班ね!アリスとサクラ、どっちから行く?」 「サクラ、お先にどうぞ」 「ありがとう。どれにしようかなー」 「今のアオザイ風はキープする?」 イノの問いにサクラは首を振った。眉を寄せて太もも辺りの布をつまむと裾をヒラヒラと振って見せる。 「ほら、結構長いじゃない?私、戦うときは体術がメインだから動くときに邪魔になるのよね。だから新調するなら短いのって決めてたんだぁ」 「そ、そっか・・・じゃあ、どれがいいかな・・・」 「そうねぇ。テンテンさんはチャイナ服ってテーマがあったから選びやすかったけど、あんた今の恰好止めるのよねー」 「赤を中心に纏めたらどう?サクラのイメージってそんな感じじゃない?」 「えぇ。あとは今の忍服にもついてる白いリングのような模様かしら」 そんなやり取りがあって数年前にサクラが忍服を買ったコーナーへ歩いて行く五人。そこにはアオザイ風の忍服が並んでいた。 サクラは懐かしげにそれらを見る。きっと今着ている忍服も悩みに悩んで決めたのだろう。 「あ、ねぇサクラ!こっちに上だけのあるわよ!」 「ほんとだ!流石品ぞろえが良いわね。赤ゲット!」 そう言って今の忍服と似たような細身のノースリーブを手に取る。続いてボトムスを探すが中々目にかなうものが見つからない。 ズボンにスカート、キュロットなどを見て回って暫くしたところで、ヒナタが何かを見つけたらしくサクラを呼んだ。 「どうしたの?ヒナタ」 「あ、あのね・・・あんなのはどうかな」 そう言って指差した先には、アオザイのように横が開いていて前後にも切れ込みの入っているスカートらしいものがあった。セットでその下に履くズボンもついている。 「これ良いじゃーん!ヒナタナイス!ピンクなんていいんじゃない!?どうよサクラ!」 「うーん・・・うん!良いかも。これにするわ。あとは肘当てとグローブが欲しいかも」 ということで肘当てとグローブをカゴに入れてサクラの買い物は一段落した。 「よし、次!アリスね!」 「えぇ。わたくしは特にこだわりはないのだけれど・・・。ただ、やはり短いのは止めようかしら。足を出すのはちょっとね・・・」 眉を下げて苦笑いを零すアリス。未だにミニスカートはしっくりこないらしい。 「んー・・・アリスってズボンはあまり似合わなさそうよね。でもミニも駄目かー」 「まぁ取り敢えずイメージカラーは緑じゃない?」 「私もそう思います。でも短いのは駄目でズボンも駄目となると選ぶの難しいわね・・・」 五人は首をひねって考え込んだ。選択肢はかなり狭い。 「あ、アリス」 「なにか良い案を思いついた?サクラ」 「分からないけど、足を覆っていればいいのよね?長いスカートじゃなくて前みたいなローブとかでも大丈夫なのよね?」 「え、えぇ・・・」 「それならほら、裾の長い布を腰辺りに巻いて前で留めたら良いんじゃない?」 「なるほど・・・!」 サクラの提案にアリスは明るい顔で手をパンと合わせる。どうやら良い案を思いついたようだ。辺りを見渡すと目当ての棚を見つけてそちらへ歩いて行く。 数多くの商品が並ぶ中でアリスが手に取ったのは着物を上下に分けたような忍服だった。肩が大きく開いているところが大人っぽい。 中には太ももまであるピッタリとした黒のチューブトップワンピースを合わせて完成だ。 「良い感じ!どうなるかと思ったけど結構すんなり決まったわね」 「サクラのお蔭だわ。布を腰に巻くという発想はなかったもの」 「私もパッと思いついただけよ。大したことじゃないわ」 手を振って否定するサクラ。アリスは小さく笑って礼をすると、ヒナタに目を移した。
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