巡り会いてU | ナノ

担当:小南


「ねぇアリス、折り紙をやってみない?」


昨日までとは違い、確実に平和な一日になると断言できる日が来た。

そう、今日の担当は小南だ。

飛段やトビのように馬鹿騒ぎするでもなく、デイダラのように子供っぽい喧嘩になるでもなく、サソリや角都のように戦争まがいのことが勃発するでもない。

まぁゼツと鬼鮫のときも平和ではあったが。


兎にも角にもそんな朝、小南は折り紙を持ってアリスに話しかけていた。


「・・・折り紙、」

「えぇ、こういった正方形の色紙を折って形を作るの。見ていて」


そう言って机の上で鶴を折ってみせる。

手馴れているようで、ものの数分で一羽が完成した。


「どうかしら」

「これ、一枚の紙から出来ているのね。面白いわ」

「それは良かった。アリスもやってみる?折り方なら教えるから」


小南が新しい紙を一枚差し出せば、アリスは数秒考えるようにしてから受けとる。


「まずはこうして三角に二回折って───」


新しく出した紙で手本を折る小南に続いてゆっくりと折っていくアリス。

結果、かなり時間はかかったし折り方も小南のそれより随分と雑だが、一羽の鶴が出来あがった。

羽を広げてコトリと机に乗せる。


「あら、初めてなのに上手じゃない」

「ふーん、いいんじゃねェか?うん」


後ろから覗き込んだデイダラが軽く鼻を鳴らした。

半分バカにしたような言い方に、アリスはムッとした表情を彼に向ける。


「暇人ね、貴方」

「仕方ねェだろ。今ちっと行き詰ってて、なのに外に出るのも控えろって言われてんだからよォ、うん」

「だからといってわたくしに話しかけないでいただけて?」

「相変わらず可愛げねぇな、お前──!」


バチバチと火花が散る中、急にデイダラめがけて紙の手裏剣が襲いかかった。

反射的に避ければ数本の髪の毛が宙を舞う。

紙手裏剣は奥の壁に音を立てて突き刺さった。

デイダラはそれが飛んできた方向───小南に目を向ける。


「何すんだよ!危ねェだろ!」

「貴方こそ騒がしいわ。もう少し静かにすることを覚えなさい」

「お前等二人して・・・ったく、わぁったよ、静かにしてればいいんだろ、うん!」


「おやおや、小南さんがあのようなことを言うとは珍しいですね」

「あぁ。だがそのお蔭でアリスとは意気投合しているようだ」


見てみれば確かに先程よりも会話が弾んでいるように見える。

サソリは不貞腐れた表情で戻ってくるデイダラに喉を鳴らして嗤った。


「デイダラの奴、小南に利用されたな」

「小南も中々やるよね」
「怖イ女ダ」


「───そうよ、ここを中に折り込んで・・・」

「しゅりけん、の、完成ね。・・・これが壁に突き刺さるだなんて」

「普通に投げても刺さらないのよ。これも忍術だから」


紙手裏剣を見て感慨深げに息を吐いたアリスに、小南は小さく笑ってそう言う。

まるで姉が小さな妹に折り紙の折り方を教えているような心和む光景だ。


「飛段とトビがいないと平和だな」

「ですねェ」


「お兄様、お兄様」


紙手裏剣騒動から数分後、アリスがもう一度新しい紙で作り直した鶴を持ってきた。

此方を窺いながら控えめにそれを出すしぐさが可愛らしい。


「上手いじゃないか。アリスは器用だな」

「あ、ありがとうございます・・・」


表情を明るくさせたアリスは、イタチから返された鶴を持って上機嫌で小南の下へ帰ってゆく。


「金蘭は中々に感情が分かりづらいですね。表情が出ないというか何といいますか」

「生まれと育った環境がそうさせたんだろう」

「そういうところはイタチ、テメェに似てるよな、うん。人を馬鹿にする時はまた別だけど」


余程つまらないのか、デイダラが粘土をいじりながら会話に参加した。

チラ、と一瞬だけイタチとデイダラの目が合って(一方的な)火花が散る。


「・・・まぁ出ないというだけで小さな変化はあるからな。全く分からないというわけではない」

「んなことよりよォ、アイツいつになったら戻るんだ?旦那」

「知らねェよ。今、毒の仕込みしてんだ。話しかけんじゃねェ」


投げやりなサソリにデイダラは肩を竦める。

そして再び小南達に視線を戻した。


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そして夜───


「なーァー」


任務から無事帰宅した飛段と角都、そしてどこからともなく帰ってきたトビは、談笑している小南とアリスに目を丸くする。

そして不満げに口を開いた飛段。


「なんで小南の奴、あんなに仲良くなってんだ?俺なんて未だにバカバカ言われてるってーのによォ」

「・・・うるさいのが帰ってきた」


飛段とトビを見てアリスがポツリと呟く。


「あ、アリスちゃん折り紙やってるんですか?それなら僕も 「駄目よ」 えぇー!なんでッスか!?」

「言ったでしょう。騒がしいのは嫌いだと」

「ひ、酷いッス・・・!泣いちゃいますよ!?」

「ねぇ小南、ここはどう折るのかしら」

「ここはね───」

「スルー!?」


嘆くトビを無視してやはり折り紙を続けるアリス。

だんだんと難易度を上げているため時間はかかるが、彼女の集中力は子供にしては凄い。

周囲には二人で折った動物やら花やらが散乱している。


「───ふう。アリス、今日はここまでにしない?あまりやると疲れてしまうわよ」

「そうね・・・。それにしても折り紙、というのは奥が深いのね。一枚の紙から色々な形が出来たわ」

「えぇ。(戦闘でも)応用が利くし、折っていて楽しいでしょう」


恙無く一日を終えて、安堵したような何とも言えないような、そんな表情を浮かべたメンバー達であった。




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