巡り会いてU | ナノ

アリス達がリビングっぽい(洞窟内のためそう呼んでいいのかイマイチ分からない)場所へ行くと角都が椅子に座り賞金首リストを眺め、サソリは傀儡の部品を弄り、鬼鮫が食事を運んでいる光景が目に入った。


「食事・・・わざわざ集まるのね」

「情報交換をしたりリーダーから指示を受けたりもするからな」

「あぁ・・・」

「なんか元気ねぇな、うん」

「気にしないで。軽くカルチャーショックのようなものを受けているだけだから」


共同生活をしているだけでも驚きだというのに、いくら理由があるとはいえ食事までも共にしているとは。とアリスは溜め息を吐いた。


「よっしゃ、飯だ!ってあれ、サソリがいるたぁ珍しいじゃねぇか」

「おや、金蘭も連れてきたのですか。・・・あぁ、だから先程イタチさんは軽いものを作れと」

「いきなり重いものを入れるわけにはいかないだろう。アリス、鬼鮫にスープを作らせたが食べるか?」

「・・・えぇ。お気遣い感謝するわ」


そんなやり取りをしている内に全員がテーブルにつく。アリスは目の前にあるカップを軽く覗き込むようにして見た。


「野菜スープ・・・?」

「知っていたんですか。一国の姫君だからてっきり・・・」

「失礼ね、これくらい分かるわよ。・・・ぁ」


小さく声を漏らしたアリスに、隣に座っていたイタチが「どうした」と問う。


「い、いえ・・・。鬼鮫、これ隠し味などに薬味を使用したかしら」

「隠し味・・・というより、普通に味の調整で塩と胡椒は使いましたよ」

「・・・そう」


アリスはお粥から目を放すと皆が食べている様子を見渡す。因みに飛段とデイダラが騒いでいる以外は基本静かだ。

ちょこちょこその二人が他の人にちょっかいを出すため巻き込まれて煩くなる時もあるが。


「サソリは食事をしないのかしら」

「テメェには関係ねーよ」


彼の前に食事を置かれていないのを見てアリスは小首を傾げるが、教える気はサラサラないらしくバッサリと切り捨てられた。

しかし期待はしていなかったため軽く肩を竦めて再び自分の食事に目を落とす。


「アリス、食べないのか」

「折った所が少し痛むから・・・食べたいけれど今は止めておくわ」

「ならそれオイラが貰うぜ。こんだけ食ってもまだ入るからな、うん」

「えぇ、どうぞ」


アリスが近くに座っていたデイダラの前に器を移動させる。さっそくそのスープを食べようと彼は器を手に取った。




「──止めとけデイダラ」

「うん?」


口に運ぼうとしたところで急にサソリに止められたデイダラは訝しげに彼に視線をやった。


「なんでだよ、旦那」

「食べたら死ぬぞ」

「は!?」


その言葉にデイダラは器に入っているスープを凝視した。まさか毒を盛ったのかとの問いにサソリが事も無げに肯定の意を示す。

角都も感心する中、アリスはお茶を飲んで一息ついていた。


「でもよく気付いたよなぁ・・・。見た感じじゃ全然分かんねェぜ?」

「匂いだろう。さっき鬼鮫に確認していたからな」

「えぇ。念のためだったけれど確認しておいて良かった」


「湯気の中に少々変わった香りを感じたから」とホッとしたように言うのを見て、サソリは顔を顰めて舌打ちをした。


「・・・サソリさん、彼女を殺すつもりだったんですか」

「あぁ、悪いか」

「メンバーを殺害したとなればリーダーが黙っていないと思いますが」

「まだ正式には入ってねェ。それまでに殺せば問題ない」

「物騒だこと」


小さく眉を顰めるアリス。話が一段落したところで、イタチは鬼鮫にアリスの食事を作り直すよう鬼鮫に言った。そして暫く、鬼鮫が出来立てのスープを持ってくる。


「悪いわね」

「随分と素直なことで」

「必要以上に角を立てるつもりはないわ」


そう言ってスープを口に運ぶ。久しぶりの食事が、体に染み渡った。


──────────
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「ごちそうさま」


アリスが食べ終わった頃には既に皆食べ終わっており、部屋に戻る者や彼女を観察したりちょっかいを出したりする者など、各自自由にしていた。

イタチは彼女が食事を終えたことを知ると読んでいた巻物から顔を上げる。


「食べ終わったか」

「んじゃー遊ぼうぜぇ!」

「遠慮しておくわ。ところで浴場はあるかしら」

「ついてこい」


アリスはイタチの案内で風呂に向かった。軽くあしらわれた飛段は、拗ねたように口をとがらせる。せっかく待っていたというのに。


「イタチの奴、何かと気にかけてるけどさ・・・もしかして惚れてたりしてな」

「あの仏頂面がかァ?そりゃねーだろ!もしそうだとしてもぜってぇ俺が先にヤる!」

「つーかお前は女なら誰でも良いって感じだよな、うん」

「んなことねぇって!あーいう女の方が襲い甲斐あんだろ!」

「ま、確かにな。うん」


そんな思春期ならぬ青年期二人の会話を聞きながら、片付けをしていた鬼鮫は小さく溜め息を吐いたのだった。



一方廊下に出た二人は───


「向こうが各自の部屋だ。お前の部屋も一応ある」

「それはありがたいわね。気を休める場所は必要だもの」


アジトの中を簡単に説明しながら歩いていた。どうやら自然の洞窟を加工して使っているらしい。


「何か困ったことがあったら俺に言え。角都と鬼鮫は兎も角、飛段とデイダラとサソリさんは駄目だ」

「困ったこと、ねぇ・・・。相手が暁である以上誰が駄目で誰が大丈夫なんてないと思うけれど。まぁ赤砂のサソリは確実に無理だわ。近付いた途端に殺されそう」


そんな話をしていると、程なくして風呂に繋がる脱衣所に着いた。中々に広いが殺伐としていて味気がない。が、まぁこれは仕方がないか。男所帯で煌びやかとかだったら逆に引く。


「風呂の中にある物は好きに使え。タオルはここにある。使用後は籠の中に入れておけばいい。それから・・・、・・・」


ここでイタチが何かに気付いたように口を噤んだ。


「どうかしたの」

「・・・すまない、着替えを忘れていた」

「あぁ、それならわたくしの巻物に入っているのだけれど・・・あら」


ポーチに手を入れようとしたアリスだが、見事に空を切る。どうやら没収されてしまったようだ。どうしようかと少し考えて、溜め息を一つ。


「・・・仕方ない。着替えはどうにかするわ。案内をありがとう。終わったら何処へ行けばいいかしら」

「さっきの部屋で待っている。・・・あぁ、それから。馬鹿二人が来るかもしれないが気付いても放っておいて構わない」


イタチは踵を返して出ていった。




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