─三日後─ 「アリスちゃーん!ついにこの日が来ましたね!心の準備は出来ていますか!?」 任務へ出る日の朝、机について食事を待っていたアリスにトビが駆け寄る。 この上なく面倒くさそうな目を向けるアリスだが彼には効果がないようだ。 「朝から騒がしい・・・。そんなに大きな声を出さなくても聞こえるわ」 「いやぁ、記念すべき初任務なものですから舞い上がっちゃいまして!」 「貴方が行くのではないでしょう」 「親心みたいなもんッスよ!」 「頭の中がお花畑な人間が親なんて恥以外の何でもないわ」 「相変わらず辛辣!」 ウワーン、と顔を覆って泣き真似をするトビに、アリスは冷たい視線を送る。 仕舞いには声もかけずに運ばれてきた食事へと意識を向けた。 「───アリス、今日行ってもらうが準備は良いな?」 「特に持っていくようなものもないでしょう。強いて言うならば、いまだに何故わたくしが出向かなければいけないのかが疑問だわ」 ペインの問いに不満そうな声を零すアリス。外に出るのは好きだが遠くまでは行きたくないらしい。 というより他人の言うことを聞いて自分が腰を上げなければならないことが納得いかないのだろう。 「無事に帰ってきたらお祝いしようぜェ!俺スペアリブ食いてー!」 「お前が肉を食いたいだけだろう、飛段。任務に成功したくらいでそんなことをやってられるか」 鼻を鳴らして言った角都に飛段が抗議するも間もなく一蹴された。 「まったく、わたくしが帰ってくる頃には少しくらい静かになっていてほしいものだわ」 「えぇー!そんな暗い雰囲気、僕達には似合いませんよー!」 「おいトビ!オイラ達は遊びでここにいるんじゃねェんだぞ、うん!」 「でもデイダラさん、いつも粘土で遊んで 「ああ˝!?」 すいまっせん!」 食事中にもかかわらず騒がしい彼等に、アリスは諦めたように息を吐く。言っても聞かないのは最早日常茶飯事だ。 恐らく他のメンバーのようにスルーするのが一番賢い。反応しなければ絡まれることもなくなる・・・はず。 暫くして食事を終えたメンバー達がちらほらと席を立ち始めた。もう少しかかりそうなアリスはイタチに目をやる。 「急がなくてもいい。俺と鬼鮫は準備があるから部屋に戻る。それと、あとで服を持っていくから着替えてくれ」 「分かりました」 ────────── 「さて、行きますか」 「用意は良いか、アリス」 「はい、お兄様」 とうとうアリスが大蛇丸の下へ指輪を取り返しに行く時が来た。とはいってもアリスの装備はいつもとそう変わらない。 因みに彼女の服装は元の忍服の上に暁の外套、そして笠である。流石にドレスではいろいろと不便だろう。 「イタチ、鬼鮫、くれぐれも頼んだぞ」 「あぁ、分かっている」 「お任せを」 二人の言葉に頷いたペインはデイダラに視線を移した。渋々ながら鳥を二つ差し出すデイダラ。 ボンと破裂音がして大きくなったそれに、一つは鬼鮫が、もう一つはアリスとイタチが乗る。 「一応目的地までオートで飛ぶようにしておいた、うん。敵に襲われても跳び続けるからな。自分達でどうにかしろよ」 相変わらず機嫌が悪そうな彼だが手を抜くなんてことはしないだろう。 ばさりと羽ばたいた時の浮遊感にアリスはイタチにしがみ付く。どうにも慣れない感覚のようだ。 遠ざかる三人を見送って、ペインはアジトへ戻って行った。 ────────── 「お、お兄様、まだ・・・まだ、着かないのですか・・・」 跳び続けておよそ一時間。アリスはぐったりした様子でイタチに支えられていた。 抱えられて走るのも駄目だが、この鳥も駄目らしい。そういえば今のアジトに越してきた時も酷く疲れた様子だった。 「目的地の近くの村まで半日といったところだ」 「・・・・・そうですか」 「完全にダウンしていますね」 「休むにも休めないからな・・・。済まないが向こうに着くまで我慢してくれ」 「は、い・・・」 大きく息を吸って吐いて、風景を眺める。右も左も森と山で、遠くの方に少し違った景色が見えるだけだった。 [ back ] |