「せせ先輩方どうしましょう!?この子なんて言ってるんですか!?」 「んなこと俺が知るかっつーの!」 「Didn't you hear? I ask, "Who are you?".」 (聞こえなかったの?「誰」と聞いているのよ) 答えが返ってこないことに気を悪くしたらしく、アリスは先程よりも強い口調で投げかけた。 「だ、旦那ぁ!コイツまた喋った!なんて言ってんのか全然分かんねぇよ!うん!」 「うっせぇ黙れマゲ。・・・おいリーダーどうすんだ。言葉通じねェぞ」 「これは・・・想定外だな。言語が違うという情報は聞いたことがなかったから言葉の壁があるとは思わなかった」 そう言っている間にも騒がしい三人──デイダラ、飛段、トビ──に部屋に置いてあった椅子と机が襲いかかっている。 「くっそ!しつけぇ!」 「おい飛段割るんじゃねェ!数が増えるだろうが!うん!」 「そう言うデイダラさんこそ、こんなところで爆発させないで下さいよ!」 ギャーギャー言っている三人を横目に、アリスは残りの七人に目を向けた。 「Finally I hear it once again. Answer, if you do not want to die. …Who are you? And where is this?」 (最後にもう一度聞くわ。死にたくなければ答えなさい。・・・貴方達は何者?それから、ここはどこなの?) 「・・・どうしましょう、ペイン」 「そうだな・・・」 「何と言いますか、だんだんマズイ雰囲気になっていますね」 「面倒事になる前に殺っておくか?」 「・・・」 ───ねぇ兄さん、この人誰? ───あぁ、サスケは初めて会うんだったな。この人は・・・ そういえば、サスケがよく聞いてきた。 知らない人と会った時。挨拶するよりも先に。 「・・・待て」 不意にイタチがの前まで来て膝を折る。 彼女よりも少しばかり視線が低くなった状態で、彼は口を開いた。 「うちは、イタチ。俺の名前は、うちはイタチだ」 「Mr.イタチ・・・、・・・Mr.ウチハ?」 若干訛ったような発音ではあるが、首を傾げながらも訝しげに復唱してみる。 それを見たイタチはコクリと頷いた。 「Mr.うちは・・・Ok。あー・・・その発音と文の構成、だと・・・この言語、で、合っている?」 たどたどしい口調で話すアリスにイタチは一瞬驚いた後で頷く。 そこに煩かった三人が帰ってきた。 どうやら魔法は解かれたらしい。 「ふぃー、疲れたぁ。あ、イタチさんとアリスちゃんのやり取り聞いてましたよ!なんとか言葉通じそうですね!」 「黙りなさい無礼者」 「アレ・・・、めっちゃ流暢に言われましたけど。なんとかどころか普通に滑らかだったんですけど・・・!」 「そんなことより 「スルーっすか!?」・・・・・「あ、ハイ、ごめんなさい黙ります」・・・ここは、どこ」 殺気の中にほんの少しの焦りを含ませて、アリスはペインに問う。 「・・・覚えてないのか?」 「口の利き方に気をつけなさい。あたくしは、いつも通りベッドに入った、はずだわ。起きたらここにいた。どうやって、あたくしを連れ出したの」 彼女の言葉にペインはどうしたものかと溜め息を吐いた。 恐らくアリスの記憶はその容姿当時のものだ。 そして普通に生活をしていて、寝て起きたらここにいたということになっている。 このままでは誘拐されたと判断されても可笑しくない(まぁ実際誘拐なのだが)。 「・・・・・王族誘拐なんて、やってくれるわね。確かにあたくしが気付かないまま移動させたことは見事だわ。でも、やるならやるで意識がない間に止めを刺すべきだった。詰めが甘い」 ス、と彼女が腕を向けた。 「おや、随分と高慢な子ですね。一度痛い目を見せておいた方がよろしいようで」 「この姿で殺しても傀儡としては使いづれぇな・・・」 「同一人物とはいえ(換金所に持っていって)金になるかどうか、難しいところだな」 「待て、無闇に戦闘に持ち込むな。・・・イタチ、どうにかならないか」 「どうにか、と言われてもな・・・。・・・アリス」 呼びかけられた彼女は上げた手をそのままにチラリと立っているイタチを見上げる。 冷たい双眸は出会った時のそれと似ていた。 「手を下ろしてくれないか。・・・せっかくの再開なんだからな」 「え?イタチさ 「・・・」 いえ、黙ります」 「再開?あたくしは、貴方のことを知らないわ」 「当たり前だ。俺とお前が会ったのはお前がまだ物心つく前だった」 「口では何とでも言えるでしょう。それに、そんなに前なら人違い、ということもあり得るわ」 「いや、大事な───妹、だ。間違えるわけがないだろう」 イタチの言葉に何人かが声をあげそうになった。が、振り向いたイタチの眼が万華鏡写輪眼になっていることに気付き、何とか言葉を呑み込む。 「・・・妹。ならば余計にあり得ないわ。あたくしに兄弟姉妹はいないもの」 「知らないのも無理はない。異母兄妹というやつだからな」 「異母兄弟・・・、お父さ───陛下、に側室がいらっしゃるなんて」 「まだお前が生まれる前だったそうだ。身分の違いで存在自体なかったことにされたがな。だがそれでも不安要素は潰されるかもしれない・・・ということで、俺の母は俺と共に“此方”へ来た」 「つまり、あたくしが貴方とお会いしたのは、貴方のお母様があたくしのお母様に時空間移動の手助けを借りに来た時、ということかしら」 「あぁ。今お前がここにいるのも、いろいろと訳ありでな・・・」 「すごく尤もらしいこと言ってるよね・・・」 「ヨクココマデ話ガ噛ミ合ウナ」 ある意味感心するほどの話術。 今持っている情報だけでここまで話を作れるイタチは勿論すごいが、その話についていける少女も中々にできる。 だが才女とはいえまだ7歳。この勝負、イタチの勝ちだ。 「・・・そう、だったのですか。義兄とは存じず失礼いたしました」 「気にするな。それにもっと気軽にしてもらって構わない。兄妹なのにそこまで余所余所しいのもおかしいだろう」 “兄妹”。その言葉にアリスの表情がほんの少しだけ緩んだ。 しかし直ぐに眉を顰めて辺りを見渡す。 「お・・・お義兄様、は・・・ここに住んでいらっしゃるのですか?」 「あぁ。時々移動はするがどこも似たような感じだな」 「そんな・・・本来であれば、王位を継ぐ者として相応の扱いを受けているはずでしたのに。これでは下男の方がまだマシな生活環境ですわ。なんとも御労しい・・・」 冗談も嘲りもなく、本当に悲しげな表情をする少女にメンバー達が何とも言えぬ顔になる。 「・・・なんかさり気なく貶されてる気がする、うん」 「他意がないという所がまた質悪いですね・・・」 「・・・心配してくれるのはありがたいがアリス、お前も暫くはここに住むことになっている」 「・・・・・What?」 イタチの発言に、長い沈黙の後ポロリとそう零す。 信じられないといった顔からして自分までここに居座るとは思っていなかったのだろう。 「すまないが慣れてくれ。ついでに後ろにいる奴等を紹介しておく」 未だ立ち直れないままのアリスを置いて、イタチは一人一人名前を言っていく。 全員の紹介が済んだところで少女は漸く口を開いた。 「・・・・・oh, my god」 「アリスちゃーん?聞いてました?」 「かなりショックを受けてるみたいね・・・」 「大丈夫か」 「・・・はい。こうなってしまったことは仕方ありません・・・せっかくお義兄様にお会いできたんですもの。このような牢屋だか物置だか分からない場所でも、数日であればどうにか我慢してみせますわ」 相も変わらず呆然とした様子のアリスをイタチは心配そうな目で見ていた。 しかし長年の王城生活により若干捻くれてしまった性格が顔を出し、その排他的唯我独尊王女気質にメンバー達が頭を抱えるのも時間の問題である。 [ back ] |