15-3 「──はい、わかりました。ありがとうございます。失礼します」 「主、どうだった?」 しばらくの電話が終わり、彼らが様子をうかがってくる中そっとスマホをテーブルに置く。 両肘をついて頭を抱えた。 「無期限自宅待機・・・今後のことは上が議論するから進展があればまた連絡するって・・・」 無期限というのだから文字通り無期限なのだろうけど、まさかこのまま倒産とかないよね。 たぶん会社が火災保険に入っていれば・・・いやこの場合ビルのオーナーか?うん、詳しいこと分からないけど保険に入っていれば何かしらの補償が下りるはず。 でもどっちにしてもあのビルがなくなったら新たに職場となる場所と、そして諸々のお金とか時間とかが必要になるわけで。 この家も会社からの補助が出ているからこそ住めているわけで。 結論、お先真っ暗 「これは審神者に転職するのも近そうですねぇ。まぁ、どこの馬の骨とも知れぬ輩よりかは幾分かましといったところでしょうか」 「そう思うなら未来の主人に今のうちに媚び売っとけよ」 いやそもそもまだ転職すると決まってないけども。 勝手に私のこの先の予定を立てないでください傷心中なんだよ労われ。 鼻で笑う宗三から目をそらして再び頭を抱える。 明日から毎日日曜日だよやったね!なんて投げやりに言ったら肩に労わるようにポンと手が乗せられた。 大和守か加州か薬研かと思って振り返るとなんと膝丸だった。え、なに。 「"にーと"になるくらいなら審神者になったらどうだ。ほら、その・・・現代の人の寿命で考えても君はまだ若い。その歳で諦めるのは早いんじゃないか」 「うわ膝丸に慰められた」 「叩き切るぞ」 「お兄さん助けてあなたの弟が激おこぷんぷん丸だ」 「こう見えて激おこぷんぷん丸は君をとても心配しているんだよ」 「おい兄者に変な呼び方を吹き込むな!」 髭切に話を振れば私が言ったとおりに膝丸の名前を呼ぶものだから、それでまた部屋が騒がしくなる。 訂正している様子をぼーっと眺めていれば横から控えめに薬研に呼ばれた。 「大丈夫か。・・・こんなことになったんだ。一人になりたければ全員撤収させるが」 「僕らがいるとゆっくり考えられないもんね」 「ありがとう、薬研、大和守。確かにそうなんだけど、ただ一人になると悪い方向にばっかり考えちゃいそうで・・・」 はぁ、と大きくため息をつく。 色々考えないといけないことはあるんだけど、さすがに静まり返った部屋で一人塞ぎ込んだところで建設的な考えができないことは分かり切っている。 今回ばかりは騒がしい彼らがいてくれてありがたいとすら思っていた。 何だかんだこちらの様子をうかがいながら話を振ってくれる彼らは、いつもよりも少しだけ夜遅くまで一緒にいてくれたのだった。 ────────── ──────── ────── 数日後。 会社からの連絡はまだなく何処かに出かける気分でもなかったから家でダラダラと過ごしていた。 平日の真昼間に家でくつろいでるって変な感覚だよなぁ。 なんだかサボってるみたいで罪悪感がある。 なんて思いながらアイスを食べていると、不意にチャイムが鳴った。 宅配頼んだ記憶はないし、またアイツ等かな。毎度毎度よく飽きないもんだ。 立ち上がって呆れ交じりの目をインターフォンの画面に目を向ける。 が、映っていたのはいつもの彼等ではなかった。なかったのだが。 「(お面してスーツ着てる・・・めっちゃ見覚えある・・・)」 いつか神社で見た二人組が玄関前にいた。 ついでに後ろには加州と今剣と太郎太刀もいた。 ・・・・・・・・・・居留守しよう。今剣と太郎太刀には悪いけど。 見なかった聞かなかったことにして座りなおす。 もう一度チャイムが鳴ったが無視して数秒後、今度はドアをドンドンドンと連続で叩かれた。 「いるのは分かっているんだぞー!」 「証拠は挙がっているんだ!大人しく投降しろー!」 「お袋さんが悲しんでるぞー!」 「刑事ドラマ始めんな誤解招くわ!!」 共有廊下で声を上げたお面二人に顔を引き攣らせながら速攻で玄関のドアを開けに行ってツッコむ。 「あ、こんにちはー。お久しぶりです」なんて呑気な挨拶をしてくる・・・なんだっけ、遡行軍対策本部?の二人を殴りたくなった私は悪くないはず。 というか本部勤務ってことは優秀な人だと思うんだけど色々緩くないか。 もっと緊張感とか威圧感とかあってもいいと思うんだけど。いやまぁ対応する側としては話しやすい人のほうが良いっちゃ良いんだけどさ。 「・・・とりあえず、上がってください」 玄関先でごたごたが長引いてマンションの人に見られて噂になったら溜まったもんじゃない。 苦虫を噛み潰したような表情を隠しもせずに、彼らを部屋に案内した。 [ back ] |