捜索記 | ナノ

13-2

あれよあれよという間に野郎共の輪に入れられた。
寿司折片手にネクタイを頭に巻いて酒のせいでテンションの高い肉体美の集団である。
ちなみにヤバイ数の一升瓶がそこら中に転がっていた。
頭沸いてんじゃねぇの。

「やっほー!飲んでるぅ?」

アッ、次郎太刀・・・やばい飲まされるアル中待ったなしですねオワタ。
肩に腕を回されて傍らに置いてあったまだ空の升を持たされたと思ったら、零れそうなほど酒を注がれた。

「あ、ありがとうございます」
「やーだねぇ堅苦しい!酒酌み交わせば皆兄弟だよ!ほら飲め!」

お前等と兄弟とか嫌だよぉ・・・。

いきおいに押されて二回に分けて半分くらい飲めば何が楽しいのかケラケラ笑われた。
酔っ払い特有のこのテンション、すこぶる面倒くさい。隣にいるだけで疲れる。

「おっ、楽しそうじゃないか。酒とつまみ持ってきたぜ」
「おお?ありがと鶴丸〜!ちょうど空いたところだったんだよ」

苦笑い交じりの愛想笑いでその場をしのいでいたところ、片手につまみの皿と酒のコップ二つを乗せた盆、もう片手に酒の瓶を持った鶴丸が来て次郎太刀を剥がしてくれた。

「大丈夫かい?」なんて気遣ってくれる鶴丸に初めて心臓がトゥクン...となった──気がしたけどやっぱ気のせいだった。

髭眼鏡と頭ネクタイと寿司折に追加して、そのネクタイに差してある「The world is mine」と書かれた扇子。
それは刀剣男士としてぎりぎりアウトだと思うのですがいかがでしょうか・・・。

「ほら、君にはこっちだ。加州と大和守が用意してくれた」
「あぁうん、ありがとう」

隣に座った彼が盆からコップを渡してくれて、いろいろなつまみが乗った皿を進めてくれた。
コイツ何だかんだ気が利くよなぁ・・・もし人間かつ普通顔だったとしても、話し上手だし要領良いから人気者になって成功するタイプだと思う。
テンション高めに乾杯の音頭をとる彼にほどほどに応えてコップの酒を呷る。

「あ、さっき飲んだのより好きかも。なんていうお酒?」
「『魔王』だそうだ。酔いつぶれた宗三が抱え込んでいたのを失敬してきた」

え、それって焼酎の中でも人気のある三銘柄、通称『3M』のうちの一つじゃないか。
レアでプレミアがつくって噂の・・・よく手に入れたな。
あいつそんなに酒好きだったの?

「過去ってのはそう簡単に消せないからなぁ」
「はぁ・・・」

よく分からんけど何かあったのかもしれない。
あと鶴丸よ、しんみりした話ならその髭眼鏡取れ。
どう反応したらいいのか分からず曖昧な返事を返していると、彼は膝をスパンと叩いて酒を一気に呷った。

「悪い悪い。酒の席で湿気た話はするもんじゃないな」
「いやいいけどさ。人生長けりゃ色々あるもんだし」

私でさえ普通に生きてるだけで性悪美人審神者と入れ替わって歴史守るだなんて非日常を体験したんですし。
マジあの女許すまじ。

仕切り直した鶴丸が喋りだしてくれて、桜が綺麗だとかそんな話を適当に話す。
思ったより楽しい。私も少し酔っているのかもしれない。そんなことを思っていると向こうから鶴丸を呼ぶ声が聞こえた。
そちらを振り向くと随分楽しく酔った様子の岩融やら陸奥守やら次郎太刀やら、酒の席ではしゃぎそうな連中が立っていた。

「そろそろ余興でもどうだ!」
「おう!すぐ行く!
 ──すまん、ちと席を外す。今聞いた通り余興やるから楽しんでくれよな」
「あ、うん」

もともとテンションが高いのに、酒が入って更に面倒くさくなったアイツ等が余興かぁ・・・巻き込まれないようにしよう。

とりあえずもう少し距離を取ろうとつまみを一口つまんでからコップと酒を両手に持ったところで。
後ろから鶴丸の「裸踊りだ!」という威勢のいい声が響いた。

裸踊りとかアイツ等らしいわぁ・・・。

裸踊りか・・・。

裸踊り・・・。

・・・・・・・は?

「裸踊り!!?」

叫ぶような声が出て反射的に振り返った。
野郎共が威勢よく脱ぎ始めていた。

「あああ!待ったあぁぁ!」

公然わいせつ罪、通報、逮捕、SNS拡散、大騒動、刀剣男士の常識・モラル欠如の露呈──
頭の中でグルグル回り始める嫌な展開に一瞬意識が飛んだが、すぐに両手のものを雑に置いて大馬鹿野郎共に向かって駆け出した。

既にズボンを脱いで褌にまで手をかけていた和泉守に走る勢いのまま飛び足刀蹴りを叩き込めば周りが小さくどよめく。

「お前等!しまえ!その卑猥物(筋肉美)をさっさとしまえ!」
「何しやがるこのアマ!」
「こっちの台詞だ粗末なもんまで曝そうとしやがって!──いやこんなことしてる場合じゃない。着ろ。とりあえず服着ろ。通報される」

「えー」だのなんだの抗議の声が聞こえるが、こればかりは見過ごすわけにはいかない。
桜舞うなか輝く肉体を曝け出し酒に酔って踊り狂う男共──花見という雅な日本の文化を綺麗なかたちで後世に残すためにも阻止しなくては。
あと周りの花見客の証言次第では私まで巻き添えで厳重注意なり補導なりを食らいかねない。

「いいですか上の服はともかく下は脱いではいけませんこのご時世情報が映像や画像で残るし拡散も簡単にされます公然わいせつ罪という罪で逮捕もされます筋肉隆々のイケメン集団脱衣ショーなんて恰好の餌食なのでどうかお沈めください」

脱ぎ捨てられた上着やらシャツやらズボンやらを奴らに押し付けながら一呼吸で必死に訴える。
そしてその私の表情がよほど鬼気迫っていたらしい。
少し引いた様子で首を縦に振った彼等だった。


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