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突然だがここでファミリーについて少し詳しい補足をしておこう。
そもそもファミリーは言葉通り“家族”が由来だ。

創立者にして統率を務める“キング”はこの私、ツバキ。
2“クイーン”はファミリーの頭脳である元貴族。
領土防衛や治安維持、中部の監視、戦闘など主に軍事関連を担うのが特別訓練を受けている“ルーク”。経理や外交などを担当する者も。
子供からお年寄りまでいる一般人にあたる“ビショップ”は学び舎に通ったり働いたりしてファミリーの生活を支えている。
“ナイト”は“ポーン”のまとめ役であり治安維持担当。中央部との連絡係を務める。
新入りや途中参入が“ポーン”で一般人そのA。上の選考を通った者は治安維持なども担当する。

元は両の手で足りる数から始まった安寧を求める集団であり今では末端まで含めると三桁になる一大組織となった。
護身を兼ねて全員が軍事訓練を受けており緊急時には全員が直ちに対応できるよう調整してある。

住む場所は中央部と中部で二分されているが学び舎や訓練場、市場などの生活環境はどちらも同じように整っているため生活環境の差はさほどない。
では何処に出てくるかと言うと教育や軍事の面だろうか。
教養の面は元貴族が担当しているためその質は本物だし、戦闘関連は忍である私の教育を受ける機会があるため“ビショップ”でも筋が良い子なら一年ほどで地下街のゴロツキを叩きのめせるくらい腕を上げる者もいる。
さらに主に軍事を担っている“ルーク”ともなれば桁違いに強い。

収入源は、中央部は単価の高い鶏と卵と砂糖、中部はキノコ系や陰性植物の野菜がメイン。金回りの良いシーナ内との売買が盛ん。
養鶏所と砂糖の原料となるサトウキビの畑があるのは貴重な日光の下だ。実は日の光が足りなくなってこっそり地下洞窟の天井を破り採光量を増やしたこともあったりする。
ちなみに牛や羊も欲しかったが流石に生きたまま手には入らなかったため断念した。


そして今ツバキが何をやっているかというと、仲間と共に金銭調達のための鶏売却を終えて温まった懐に気分よく帰路についたところだ。

「いやぁ、好調ッスね!肉も砂糖も高く売れるから軌道にさえ乗れば一気に稼げるわ」
「まぁうちは人数が人数だからこれだけ稼いでも足りないくらいだけどね。中部も調子いいみたいだし今月はもう少し収入伸ばせると良いなぁ」

“ルーク”の子数人と共に歩きながら今月の支出を計算する。悪くはないし想定外の出費がなければプラスであることは確定しているのだが目標には少し届かないためもう少し欲しい。

そんなことを考えていたところで、不意に「おい」と声を掛けられた。
もう随分聞きなれたそれに振り返れば予想通りリヴァイが立っている。訝しげな他の子達を後ろに下がらせたツバキは彼に向き合った。

「ごきげんよう、リヴァイ様」
「気持ち悪い口調はやめろ。・・・テメェ、地下街の人間だったんだな。しかもファミリーと繋がっていたか」

ツバキを見ていたリヴァイの目が後ろの“ルーク”に移る。この状況に彼女は今後を予想して瞬時にどうすべきかを考えた。
今の自分は“キング”の首飾りをしていない。が、“ルーク”達は首に下げているため自分と彼等は別物として考えられている。ならばわざわざ申告する必要はないだろう。彼等は帰らせてリヴァイを撒いてから戻った方が良いな。

「貴方達、ここまででいいわ。今日もありがとう」

護衛として彼等に着いて来てもらった体を装って帰るように促した。“ルーク”達もリヴァイの兵服とツバキの様子を見て悟ったようで「また呼べよ」などと声を掛けて踵を返して帰ってゆく。
彼等を止めようとしたリヴァイの肩を掴んで止めれば彼は鬱陶しそうな表情で振り返った。

「おい放せ。俺は──」
「彼等と接触して“キング”の元に辿り着きたいんでしょ。でもごめんね、そんなことされたら困るの」
「守ってくれる奴がいなくなるかもしれないからか。お前のような東洋人、奴等がいなきゃとっくに貴族の玩具に売りに出されているだろうからな」

ツバキ自身がファミリーの一員かもしれないとは疑わないらしい。まぁそれもそうだ。この地下では結束力の強いファミリーに手を出すと後が怖いため喧嘩を売ってくるものはあまりいない。そのため領土外を出歩くならファミリーの証である首飾りを付けている方が安全なのだ。
きっと彼等の耳にもその情報が届いているのだろう。

「えー・・・そんなことないですって」
「あぁそうかよ。──チッ、もうファミリーの奴等を追うのは無理だな・・・まぁこいつと接触できたからいいか」
「私・・・?」
「いろいろと聞きたいことがある。まずは場所を変えるぞ」

リヴァイは肩に乗っていた方のツバキの腕を掴むと足早に歩き始める。浅めにかぶっていたフードが脱げそうになるのを慌てて押さえて、ツバキは文句を言いたげに彼に付いて行った。


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