創設期企画小説 | ナノ


「第一班、里北部の見回り終了しました。異常ありません」
「分かった。今日もご苦労だったな!」

執務室にて、ツバキは柱間に見回り終了の報告をしていた。今日も今日とて平和な木ノ葉──柱間はツバキの話を緊張感なく聞いている。弟の扉間に怒られても朗らかに笑うだけだ。

「あぁそうだ。ツバキ、お前マダラと幼馴染だそうだな」
「え?あ、はい・・・確かにマダラ様とは昔から親しくさせていただいていますが・・・ご存知だったのですね」
「いや、少し前にマダラから聞いてな。あいつはお前の事を随分買っていたぞ。普段もよく一緒に修行するそうだな」
「あー、いえ、最近は少々疎遠に・・・。まぁ腐れ縁といいますか、幼少の頃に父同士が仲が良くて。それでマダラ様と知り合って修行するようになって・・・よく滅多打ちにあいましたよ。
 でもそのお蔭で柱間様のお近くに仕えられるまでに強くなりましたし、一応感謝はしていますが」

マダラと修行していた幼い頃を思い出したのか苦い顔になるツバキ。
それはもう容赦がなくて、擦り傷切り傷青痣──酷い時は骨にひびが入ったこともあった。そのお蔭か女にして程々に活躍していたわけだが。

そしてツバキが柱間と知り合ったのもその頃。囮となって一人で戦っていたところを助けられたのだ。


────────

「何故助けた」
「え、いや、苦戦してるみたいだったから」
「あの程度一人で片付けられたのに。それにこの装束でどこの一族か判断がつくでしょ。誰か知らないけどアンタ死にたいの?」
「そうじゃないけど、今回は俺とお前は敵じゃないし・・・」

ツバキの剣幕に狼狽える柱間だったがその足から血が流れているのを見てハッとした。すぐさま手を引いて近くの川まで行くと傷を洗い、服を裂いた布を巻く。
名も知らぬ人間に体を預けるなどと文句を言っていたツバキも笑顔を崩さない柱間に呆れるしかなかった。

「・・・一応礼は言っておく。ありがとう」
「いいっていいって!あ、俺柱間。お前は?」
「ツバキ・・・うちはツバキ。・・・これに免じて今回は見逃すけど、世の中私みたいに優しい人ばっかじゃないんだから気を付けなよ」

────────


これが二人の出会いだ。そして再会したのが木ノ葉創設時。因みに彼が忍最強の千手柱間だと知ったのもこの時だ。
当時戦いを挑まなくて良かったと心から思っている。

「マダラも良い幼馴染を持ったな。強いし仕事もできる。羨ましいことよ」
「兄者の場合そんな幼馴染がいてもそいつに仕事を回すだけだろう」
「でしたら私がその役を賜ります!昔の恩もありますし・・・柱間様のお役に立てるのであれば本望ですから!あ、なんなら明日から柱間様の秘書兼護衛に「何馬鹿な事を言っている」うわっ、マダラ様」

いつの間にか後ろに立っていたマダラにツバキの体が跳ねた。「うわって何だ、うわって」と眉を顰める様子にツバキは慌てて頭を下げる。幼馴染とはいえ相手は族長。他に人がいないなら兎も角、公の場で無礼を働くわけにはいかない。
自分の発言の所為で悪くなってしまった空気を払うべく(マダラが不機嫌なだけだが)、ツバキはそろそろ帰るとの意志を柱間と扉間に伝えて部屋を出た。

────────

「・・・で、どうするんだ」

報告の帰り道、怖い顔のマダラが前を向いたままそう問うた。首を傾げるツバキに少しイラついた様子で「さっきの側仕えの件だ」と鼻を鳴らす。

「だいたいあんな頼りない男の何が良い」
「頼りないことないですよ!柱間様は強くて優しくて格好良くて寛大で包容力があって知性豊かで!どこまででも付いて行きたいと思える方です!」

ぐっと拳を作って詰め寄るように言うツバキにマダラの眉間のしわが濃くなった。
それじゃまるで自分は尊敬の対象にはならないみたいじゃないか。
つらつらと柱間の素晴らしさを語っているツバキの言葉を右から左へ聞き流していれば「ちゃんと聞いてください!」と怒られる。が、そもそもその話し方から気に入らない。
昔はよくおやつを取り合ったり喧嘩したりと一族の中でも特に親しい仲だったのに。

「いい加減その話し方を止めろ。お前が礼儀正しいなど気持ちが悪いだけだ」
「何をおっしゃいますか。貴方はうちはの長、私は数多くいるうちは一族の内の一人。お気に召さなかろうと何だろうと無礼を働くわけにはいきません」
「・・・昔のお前はよく突っ掛ってきただろう」
「昔は昔です」

きっぱりと言い切ったツバキにマダラは小さく息を吐いた。

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