創設期企画小説 | ナノ


その時間、昔の柱間を彷彿させる枝間は投げたクナイを回収していた。習い始めた頃とは違って複雑な動きの中でも百発百中当たるようになり日々の修業の成果が実感できる。
この分だと割と早くイズミとの約束が果たせそうだと頬を緩ませながら最後のクナイを拾った──ところで。

「死ね枝間ァァァ!!」

怒声と共に飛んできた影に咄嗟に横に避ければ自分がいた場所が無残に砕け散る。頬を引き攣らせた枝間は漂う殺気にもう数メートル距離を取った。が、首元に冷たいものを感じて顔を強張らせた。

「動くな」

聞き覚えのある低い声。うちはマダラだ。ということはもう一つの飛んできた影は──

「よぉ、枝間」
「マダラ様とマクラ・・・。何の真似ですか」
「イズミがお前に結婚を申し込まれたと言っていてな」
「え、あ、あぁ・・・確かにこの前・・・」

ただならぬ雰囲気の中でも冷静に対処する枝間。
というか何でこんな事になっているんだ。二人共いつもは喧嘩ばかりなのに、こういう時だけ息ぴったりなんだから。
厄介すぎると顔を引き攣らせるがマダラまで出てきてしまっては迂闊に動けない。

「あれは本気か?」
「そりゃ、まぁ・・・「本気だと言ったら首を掻き切る」えぇ!じゃあ「違うと言ったら首を撥ねる」どっちも同じ!」
「千手なんぞに可愛い妹は渡せない。けど、妹が弄ばれたという事実を作るのも許せない」
「えぇー・・・面倒くさいぞ、この親子・・・」

どうしたものかと枝間が眉を顰めた時、騒ぎを聞きつけた柱間が何事だと駆けてきた。
双方を見渡した彼が何があったと聞けばマダラが肩を震わせながら事の次第を説明する。事情が分かった柱間はそんな事かと頬を掻いた。が、この親子にとっては余程の大事らしい。

「──そういうわけだ。悪いが枝間には死んでもらうぞ」
「待て待て。子どもの恋愛じゃないか。大人になればまた考えも変わるだろうし、何も今ここで「問答無用だ!ついでにお前も死ね柱間ァ!!」ぅおっと!?」

振り下ろされた“うちは”を地を蹴って避ければ更にマダラが追撃してくる。マクラと枝間も互いに向かって駆け出して、その演習場はすぐに小さな戦場となった。

──────────

そしてお昼時、腕に食べ物と飲み物が入った籠を下げたツバキは子供二人を連れて演習場へ来ていた。荒れ果てた地の中心で四人の男が寝転がっている。

「もう・・・結局ここにいたのね」
「来てくれたのかツバキ!お、食い物もあるな!流石俺の「流石俺の母さんだ!」マクラァ!」

飛び起きたマダラがツバキに駆け寄った瞬間、後ろから飛び蹴りを喰らわせたマクラがツバキに抱き着く。すぐさま体勢を立て直したマダラはマクラを投げ飛ばすとツバキに口付けてイズミを抱き上げ、着地したマクラを振り向いて鼻で笑った。

「っ、こんの暴力親父!いつもいつも母さんにベタベタしやがって!愛想つかされろ!」
「残念だったな砂利!俺とツバキは来世をも誓い合った仲だ!貴様如きが入れる隙など一寸もないわ!」
「いや、誓った覚えはなくってよ・・・」

「柱間様、枝間さん、お疲れ様です。父さんと兄さんがご迷惑をおかけしました」
「お前が謝ることないって」
「その通りぞ。にしてもマクラは強くなっていたな!」
「いつも父さんと喧嘩していますから。いい加減落ち着いても良い頃だと思うんですけどね」
「お前それ子どもが言う事じゃねーぞ・・・」
「あの二人を見ていると嫌でもこうなります」



ようやく騒ぎが一段落ついて、ツバキは持ってきた食べ物を出し始めた。サンドイッチに御握り、卵焼き、肉団子、果物・・・いろいろと出てくる昼食に散々動き回った柱間達が顔を輝かせる。
皆が和やかに食事を始めたところで、やはり落ち着かないのが二名。どちらが早く多く食べられるか競い始めた。

「せっかく母さんの手作りなんだぞ!もっと味わって食べろよ!」
「てめぇこそよく噛んでから呑み込め!そんなんじゃ味が分からんだろう!」

バチバチと火花が散るマダラとマクラに相変わらずだと苦笑いを零すツバキ達。しかしこんなに粗雑に食べられては食べ物の方が可哀想だ。

「二人共、食事は競い合うものではなくってよ。やめなさいな」
「・・・仕方ない。ツバキが・・・ツバキが!言うならここは俺が引いてやろう。命拾いしたな、マクラ」
「それはこっちの台詞だぜ。母さんが止めなかったら食べ過ぎで倒れてただろ」
「ああ˝?倒れてたのはてめぇだろうが。意地っ張りめ」
「父さんも兄さんも同じようなものだよ・・・」

睨み合う二人を見てポツリと言うナズナにツバキがうんうんと頷く。
暫く火花を散らせていたマダラとマクラだがそういえばイズミが会話に入ってこないと気付いて互いから意識を逸らせた。どこだと辺りを見渡して見つけたそこ、枝間と仲良く御握りを頬張るイズミを見つけて米神を引き攣らせる。が、また喧嘩に発展しては敵わないとツバキが二人を呼んだ。

「いいじゃない、遅かれ早かれイズミも家を出るのだから。枝間なら、どこぞの馬の骨かも分からない輩よりずっと安心でしょう」
「そういう問題じゃない」
「そうそう。イズミも母さんも俺が守ってやるんだから、どこかに嫁ぐ必要はないって」
「残念だなマクラ。妻を守るのは夫の役目だ。そして娘を守るのも親の役目だ。てめぇは俺とツバキが愛し合った証拠でしかねぇ・・・青二才はすっ込んでいろ」

ツバキを引き寄せて口付けたマダラが見下すようにマクラを見る。しかしマクラも負けてはいられないらしい。ツバキを奪い取って胡坐をかいた自分の足に乗せるとちゃっかり胸元に腕を回した。マダラの顔が怒りに引き攣る。

「てめぇ馬鹿な事考えてんじゃねぇだろうな」
「息子だろうと青二才だろうと男と女であれば子供は出来る」
「やったら本当に殺すぞ」

「兄さん、それ近親相姦だよ。やめた方が良いって、世間体的に」
「やだ、ナズナったらどこでそんな言葉覚えてきたのよ」
「兄さんが教えてくれた」

いがみ合う二人に挟まれたツバキがちょっと危ない言葉を覚えてきたイズナに頭を抱える。しかもそのルーツは兄のマクラと来た。アカデミーを出て忍になれば大人との付き合いも増えていくだろうが一体誰に教わったんだ。

「お母様お母様」
「あ、あら、なぁにイズミ」
「・・・顔色が悪いですわ」
「大丈夫・・・ちょっと息子二人の将来が心配になっただけだから。それで、どうしたの?」
「ほらこれ、花冠!枝間に作ってもらったの」
「あら、素敵ね」

目の前に出された花冠にツバキが頬を緩める。枝間を見れば照れたように頬を染めていて、柱間は昔の自分そっくりな頭をわしわしと撫でていた。
機嫌よく花冠を頭に乗せたイズミが嬉しそうに笑って顔を赤くして──そこで不意に頭から花冠が抜き取られる。え、と疑問を浮かべる頃にはそれはマクラの手によって宙に放り投げられていて。印を組んだマダラの豪火球によって、花冠は綺麗さっぱり灰になった。

「うわ、兄さんたち鬼だね」

周りがしーんと静まりかえる中ぽつりと冷静に零したナズナ。


その後には切れたイズミと土下座して謝り倒すマダラとマクラ、苦笑いを零しながら彼等を眺めるツバキ、平然とデザートにかかるナズナ、落ち込む枝間とそれを宥める柱間の姿があったらしい。



うちはさん家の
(そんな日常)
(そして巻き込まれる千手家)

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