「そうか・・・サクラも来たか」 リーとサスケの対決が終わった後、301号室に行くと扉の前でカカシが待っていた。 その第一声に四人共が頭にハテナを浮かべる。 「中忍試験、これで正式に申し込み出来るな」 「どういうこと?」 「実のところ、この試験は最初から三人一組、スリーマンセルでしか受験できないようになっている。ま、お前等は特別に四人一組だけどな」 「え・・・でも先生、受験するかしないかは個人の自由だ、って・・・」 「あぁ、言ったな」 その言葉にサクラは「ウソついてたの?」と問うが、アリスはカカシの意図が分かったようで「なるほどね・・・」と呟いた。 「仮にこのことを言ったのなら、わたくしはともかくナルトとサスケが無理にでも貴方を誘うでしょう。そうなれば、貴方はそれを断りきれずに中途半端な覚悟で試験を受けてしまうわ」 「でも・・・!じゃあもし、ここに来たのがナルトとサスケ君とアリスの三人だけだったら?だって、もし私がいなくてもスリーマンセルの条件は満たしているわ」 「お前達はフォーマンセルだろう。四人一緒じゃなきゃ受験は中止にした。この向こうへ行かす気はなかった。だが、お前等は自分の意志でここに来た。・・・サクラ、ナルト、サスケ、アリス、お前等は俺の自慢のチームだ。──行ってこい!」 そう言ってカカシは扉の前から退く。 「よし!行くってばよ!」 扉を開けて歩を進める四人。 と、最後を歩いていたアリスがカカシの前で立ち止り「それにしても」と彼にしか聞こえないくらい小さい声で呟いた。 「ん?」 「わたくしまで受験できるだなんて驚きだわ」 「まぁ、人数の事ならどうにでもなるしね」 「とぼけないで。里の忍がわたくしのことを認めていないのは分かっているわ。なんだかんだと難癖を付けて受験できないように仕向けると思っていたのに・・・」 アリスの言葉にカカシは一瞬驚いた表情になったが、すぐに笑顔を貼り付けて「火影様とイルカ先生のお蔭だよ」と諭す。 「フン、そういうこ 「アリス、早く来いってばよ!」 ・・・」 「ほら、いってらっしゃい。頑張れよ」 「言われずとも。あぁそうだわ。“志願書”が一枚余っているから差し上げてよ。サインして提出してはいかが?」 「え?余ってるって・・・枚数は間違ってなかったはずだけど。それに俺はもう上忍だから必要ないし」 首を傾げるカカシに紙を押し付け、アリスは扉をくぐっていった。 「(それにしても相変わらず察しが良いな。確かにあの時はアリスの受験に反対する者ばかりだった・・・。ま、俺は火影様もおっしゃったとおり、受験させた方がアリスのことが分かると思うから賛成だけどね。・・・さて、この紙捨てておかない、と?)」 【殉職志願書】 「(アリス・・・俺、お前に何かしたっけ・・・)」 ────────── 一方、受験会場に入った四人は人の多さに驚きを隠せなかった。 全員の視線が第七班に突き刺さる。 「(なんて数なの・・・まさかこれ、全員受験生!?)」 あまりの数に圧倒されてサクラが不安げな表情を浮かべる。 その時、離れたところからサスケに駆け寄る者がいた。 「サスケ君、おっそ〜いっ」 「ぅお!?」 イノが後ろからサスケに飛びついて首に手をまわす。 「私ったらぁ久々にサスケ君に会えると思ってぇもうワクワクして待ってたんだからぁ〜」 「サスケ君から離れーい!イノブタ!」 さっきの不安はどこへやら、イノに食って掛かるサクラ。 「あ〜ら、サクラじゃなぁい。相変わらずのデコり具合ねぇ。ブサイクゥ!」 「なんですってぇ!?」 巻き込まれてどうすることも出来ないサスケがアリスに「こいつらをどうにかしてくれ!」と目で訴えるも、ものの見事にスルーされる。 そこに別の声がかかった。 「なんだ・・・こんなめんどくせぇ試験、お前等も受けるのかよ」 相変わらず怠そうなシカマルとポテチを食べているチョウジだ。 「なーんだ、おバカトリオか!」 「その言い方やめーい!ったく、クソめんどくせぇ・・・。よォ、アリス。久しぶりだな。それと、よくこんな奴らと同じ班でやってこれたな」 「なにー!?」 「えぇ・・・始めは頭が足らな過ぎて“こんな能無し共、いっそのこと一生アカデミー生をやっていればいいのに”などと思ったりもしたけれど、最近ではもう慣れたわ。それにしても、貴方の締まりのないやる気なさそうな顔は変わらないわね」 「そう言うお前もキツイ言い方は健在だな」 と、ここでアリス達に近付いてくる三人がいた。 「ひゃっほーう!見っけ!これはこれは皆さんお揃いで」 「こ、こんにちは・・・」 赤丸を連れたキバに恥ずかしがり屋のヒナタ、それから無口なシノの三人だ。 「なんだ・・・お前等もかよ。ったく・・・」 「おっ!アリス、久しぶりじゃねーか!元気にしてたか?」 キバがアリスの肩に腕をまわしながら問う。 「馬鹿ね・・・。どれだけわたくしが元気でも貴方の平和ボケした頭には適わないわ」 突然のことにアリスは驚きながらもそう答えた。 そこに、いつの間にかイノから抜け出してきたサスケがキバの腕を払ってアリスを後ろに隠すように立ちはだかる。 「チッ・・・今年の新人下忍十名全員受験ってわけか。さて、どこまでいけますかねぇ、俺達。ねぇ、サスケ君?」 「ハッ・・・えらく余裕だな、キバ」 「俺達は相当修行したからな・・・お前等にゃ負けねーぜ」 「うっせーってばよ。サスケならともかく、オレがお前等なんかに負けるか!」 そんなナルトに謝るヒナタ。アリスは溜め息を吐いてヒナタに近付いた。 「ヒナタ、なぜ貴方が謝っているのよ・・・」 「あっ、アリスちゃん、久しぶり・・・」 「貴方も相変わらずね。少しは強くなれたのかしら」 「うん。修行、頑張ったよ。あ、そういえばサングラスかけてるあの人・・・シノ君っていうの。アリスちゃんは初対面だったよね・・・?」 「えぇ、紹介ありがとう。覚えておくわ」 アリスとヒナタが穏やかに会話しているのとは反対に、男性陣は少々不穏な空気を醸し出していた。 「おい、サスケ。お前アカデミーの時よりもガードが固くなったんじゃねーか?」 「どういう意味だ」 「表現が分かりやすくなったっつーことだ」 シカマルの言葉に黙るサスケ。 どうやらシカマルとキバは、サスケがアリスを自分達から離そうとしているのが気に入らないらしい。 まぁアカデミーの頃から比較的近くにいた二人からすれば、いきなり会話すら制限されては敵わないというのも当然だろう。 「(チッ・・・サスケの奴、ますます直接的になりやがったな)」 「(これじゃアイツとまともに話も出来ねぇ)」 「(こいつ等もアリス狙いか・・・?いや、今までの様子からして違うか・・・)」 「ん?どうしたんだ?お前等」 「ナルト、空気読もうよ・・・」 空気の読めないナルトに、呆れたように苦笑いするチョウジ。 一方、サクラとイノはその場の雰囲気から少なからず何かを感じ取ったようである。 「ね、ねぇ、サクラ?サスケ君ってもしかして・・・」 「うん、そうかも・・・。最初は勘違いかと思ってたけど・・・」 「ちょっと、アンタ!じゃあなんで黙ってんのよ!?」 「黙ってたわけじゃないわよ!こっちだって色々あるの!」 サクラの返答に溜め息を吐くイノ。 「もう・・・。シカマルとチョウジからもよく話聞くけど、なんであんな子がいいのかしら。だってアリスよ?確かに印象には残るけどさぁ。顔は見えないわ、いつも偉そうにして人を見下してるわ、人付き合いは悪いわ・・・良いとこなんてないじゃない」 「私もこの間まではそう思ってたわよ。でも、いざとなったら一番活躍してるし、なんだかんだで凄いんだから!ちゃんと向き合ってみたらたぶん考え変わるわよ?」 アカデミーの時とは一変したサクラの言い分に、イノは先程よりも深い溜め息を吐いたのだった。
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