「じゃ、ナルトをよろしくお願いします。限界まで身体使っちゃってるから今日はもう動けないと思いますんで。アリスも朝から出掛けたっきりですが帰ったら建設現場に行くようお伝えください」 「わかりました。それよりカカシさん、身体の方はもうよろしいんですか?」 「はは・・・なんとか」 「超いってくる」 翌朝、アリスとナルトを除いた四人は橋に向かっていた。それからしばらくしてようやく起きたナルトも「置いていきやがった!」と騒ぎながら家を出ていく。 家からイナリ以外がいなくなってからも家事を続けるツナミ。しかしそれはガトーの手下の男二人が押しかけてきたことによって中断させられた。 「アンタがタズナの娘か。悪ぃが一緒に来てもらう」 その時トイレで手を洗っていたイナリは何かが割れるような音とツナミの悲鳴を聞いて急いでその場に駆け付けた。 「母ちゃん!!」 「出てきちゃダメ!早く逃げなさい!」 声を張ったツナミが男二人に連れて行かれる。 母親を助けたい。けれど怖い。あの二人に敵わないのは目に見えている。うずくまって涙を流すイナリだが、不意にその脳裏にナルトとアリスと、そして亡き父の声が響いた。 ──悲劇の主人公気取ってビービー泣きやがって!お前みたいな馬鹿はずっと泣いてろ!泣き虫ヤローが! ──最初から全て諦めて逃げているだけなら負けるに決まっているわ ──本当に大切なものは例え命を失うようなことがあったって、この両腕で守り通すんだ イナリは濡れた頬を拭った。大きく息を吸って、グッと握り拳を作る。決心して先程出て行った三人を追って家を飛び出した。 「母ちゃんから離れろぉぉ──!!!」 叫びながら突っ込んでいくイナリ。舌を噛むと脅すツナミを気絶させ、男二人が刀を構える。 何かが切れる嫌な音がした。 しかし、男達が切ったのはイナリではなく丸太だ。 「変わり身の術!?」 二人が驚いて辺りを見回すと── 「遅くなっちまって悪かったな!ヒーローってのは遅れて登場するもんだからよ!」 「まぁそれで間に合わなかったら笑い話にもならないけれどね。それで、これは一体どういうことかしら」 イナリを抱えたナルトとツナミを抱えたアリスの姿がそこにあった。ナルトがイナリを降ろしながら「よくやったな!」と褒める。 イナリが奴らを引き付けてくれたおかげでイナリの母親を助けることが出来たと、アリスに寝かされるツナミを見ながらナルトは言った。 「よかった・・・。あ、兄ちゃんも姉ちゃんも、どうして侍がここに来てるって分かったの?」 「森の中に刀で切られたイノシシがいたのよ。周りにも刀傷がたくさんついていてこちらに向かっていたから、何事かと思って」 「そうそう!んで、オレも偶然そこに居合わせたから一緒に来たってこと!」 「そうだったんだ・・・」 安心したせいで呆けるイナリ。と、そこにガトーの手下の声がかかった。 舐めた様子で刀を構えて突っ込んで来る二人にアリスが手裏剣を放つが刀で防がれる。 しかし男が「覚悟ぉ!」と叫ぶその後ろにナルトの影分身が現れて、手裏剣を弾いて油断した二人を難なく沈めた。 「す、すげー・・・」 「ニッヒッヒッ!決まったってばよ!」 「手裏剣が囮だと気付かないなんて、頭の中が空なのではないかしら」 「へへ・・・兄ちゃんも姉ちゃんも、忍者みてーだ!」 「ばーかぁ!オレってば初めっから忍者だってばよ!」 ナルトとイナリが顔を見合わせて笑いだす。穏やかな時間が流れていた。 ────────── その頃、橋の建設現場では白とサスケが接戦を繰り広げていた。 投げられたクナイを体制を低くして避けた白にサスケの蹴りがヒットする。 「(白がスピード負けするとは・・・)」 「どうやらスピードはオレの方が上みたいだな」 蹴り飛ばされた白を見て再不斬が驚くのに対し、余裕の表情をするサスケ。 「ガキだガキだとうちのチームをなめて貰っちゃあ困るねぇ・・・。こう見えても、サスケは木ノ葉の里の名門エリート一族出身。サクラは里一番の切れ者」 「えへへ・・・(えっへん!しゃあんなろー!!)」 「それから目立ちたがり屋で意外性bPのドタバタ忍者・ナルト──に、今年のナンバー1ルーキーで傲岸不遜な毒舌くノ一・アリス」
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