「目標との距離は?」 「5m・・・いつでも行けるってばよ」 「オレもいいぜ」 「私も」 「よし──やれ!」 カカシの合図で三人が一斉に飛び出す。にゃあぁぁー!!という猫の悲鳴が響いた。 「右耳にリボン。目標のトラに間違いないか?」 「ターゲットに間違いない」 「迷子ペット、トラ。捕獲任務終了──」 ──────── 「──で、アリスは任務やんないで何やってたの?」 大名のペット探しという忍者が行うには少々平和すぎる任務が終わった帰り道、無線に全く声が入らなかったアリスにカカシが訊ねた。 いつもの通り書物を読んでいたと平然と言い返すアリスに全員が溜め息を吐く。 もはやいつものことなのだ。草むしりの時もゴミ拾いの時も荷物運びの時も。 アリスは任務のほとんどを読書に費やしていた。 まともにやったのは犬の散歩くらいか。小型犬の。 最初は不満を垂れていた七班の皆(主にサクラとカカシ)だったが、そのたびに精神がやられる返事を返されるため最近では溜め息を吐くに留めている。 ──────── 「あ〜私の可愛いトラちゃん!死ぬほど心配したのよ!!」 「み˝い˝ぃぃーー!」 無事に依頼人である大名の妻の元に戻ってめでたしなはずなのに罪悪感が募る。 悲痛な面持ちで退場していくトラをアリスが見ていると、隣で任務が簡単すぎると駄々をこね始めたナルト。 それをカカシとイルカが咎め、火影が任務についての説明を始める──が。 「昨日の昼はトンコツだったから、今日はミソだな」 全く聞いていないナルトであった。これに黙っていないのが当然アリスで、その細い手でナルトの肩をガシリと掴んだ。そのまま抓るように力を入れる。 「ナルト、貴様・・・」 「ヒッ・・・!だ、だってオレってばもう、いつまでもじいちゃんが思ってるようなイタズラ小僧じゃねーんだぞ!」 一瞬アリスに委縮したナルトだが、続けて言った言葉に火影が感心したように息を零す。そしてCランクの任務を提案した。 なんでもある人物の護衛らしい。火影が入ってくるよう促すと、一人の酔っ払いが姿を現した。 「なんだぁ?超ガキばっかしじゃねーかよ。特に一番ちっこい超アホづら。オメーそれ、本当に忍者か?」 「あははー。誰だ?一番ちっこいアホづらって」 依頼者であるタズナのナルトは笑って三人を見渡す。 そしてアリス達の目が自分に向いていることに気付いた。まぁつまりそう言う事だ。 「・・・ぶっころーす!!」 「これから護衛する爺さん殺してどうする!?」 ちょっとしたいざこざはあったものの、タズナさんを国まで送り、橋が完成するまでの護衛任務は幕を開けたのであった。
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