時は流れて、あっという間に卒業試験の日になった。教壇に教壇に立ったイルカが生徒達の顔を見渡して口を開く。 「では、これより卒業試験を始める。呼ばれた者は隣の教室に来るように。──なお、課題は分身の術とする!」 アリスが「確かナルトは分身の術が苦手だったはずでは」などと思いながら待っていると割と早く順番が回ってきた。 試験が行われる教室へ移動して「始めてくれ」というイルカの合図で印を組む。 ボワンと、音と煙と共にアリスが三人になった。 「よし、合格だ!一年半という短い時間でよくここまでこれたな。本当によく頑張った」 「わたくしを誰だと思っているの。・・・貴方には世話になったわ。御機嫌よう、イルカ。また気が向いたら会いに来てさしあげてよ」 額あてを貰うとミズキには目もくれず教室を後にするアリス。 一言も言葉を交わすことのなかったミズキはそれを見送ると苦笑い気味にイルカに顔を向けた。 「初めて間近で会いましたが高飛車な子ですね。私とは目も合わせませんでしたよ」 「私にも初めはそうでしたよ。この前の総合試験でようやく打ち解けられた感じです」 そんな会話がされているとは露知らず、彼女は皆が待機している教室に戻っていった。 「おっ!アリスってば合格したんだな!」 「マジかよ・・・」 「分身の術くらい出来なくてどうするのよ」 「でもホントに卒業しちまうなんて凄いよな!」 「おめでとう。アリス」 まだ呼ばれていなかった四人はアリスの周りに集まって額あてを眺める。 ナルト以外は日頃親の物を見ているとはいえ、やはりこれから自分達がこの真新しい額宛を身に付けることになると思うと胸が弾むらしい。シカマルはいつも通りやる気なさげだったが。 「それよりもナルト。昨日の悪戯、わたくしも見ていてよ」 「アリスも見てたのか!すんげェだろ!あんな事出来るのはオレだけだってばよ!って、アリス?」 「えぇ、そうでしょうね。ヒルゼン様の顔岩にも派手にやってくれたみたいじゃない・・・」 アリスの周りになんとなくドス黒いものが見える気がする。そういえば三代目にかなり懐いていたんだったと、ナルトが顔を青くした。 咄嗟に「これは違う」と弁解を試みる。 「あれは悪戯という名の芸術なんだってばよ!だから、その・・・悪い意味じゃなくて、な?」 アリスが一歩踏み出せばナルトが一歩下がる。もう一歩踏み出して、もう一歩下がる。その間にもアタフタと言い訳を続けていたナルトだが、運良くそこで試験の順番が回ってきた。 これ幸いと隣の教室に消えていく。 席に戻ると既に合格して前に座っていたサスケが振り向いた。 「受かったんだな」 「当たり前よ。それよりも卒業試験だというのに簡単過ぎて不自然だわ」 「考え過ぎだろ」 「そうかしら。でもこれなら前にやった総合試験の方が──」 等々、今回の卒業試験について互いの見解を述べ合っていると、しばらくしてナルトが教室に戻ってきた。 不合格だったようで項垂れている。アリスは特に何を言うでもなくその席から黙って見ていた。 ──説明会の日── アカデミーへ行くとナルトがいた。 「あら、ナルト? (卒業試験落ちたはずではなかったかしら)」 「よっ、アリス!オレもあの後合格したんだってばよ!これでオレも忍者だってば!」 「あぁ、そうなの。貴方が忍ねぇ・・・あぁいえ、なんでもないわ」 「──アリス」 ナルトとの会話を終えてアリスが一番後ろの席に行こうとすると、彼の奥に座っているサスケから声がかかった。足を止めて振り返れば自分の隣を指さしている。 意図が分からず首を傾げると「座れ」と短く言れて既に座っていたナルトに通してもらい、サスケの隣に座った。 「何か用かしら」 訝しげに問うてくるが別に用があって隣に呼んだわけではない。強いて言えば私欲だがそれを言えるほど素直ではないし、言ったところで一蹴されるのが落ちだ。 なんでもないと、そっぽを向いて言えば特に興味無さそうな返事が返ってきた。 不意に、何やら騒がしい足音が廊下に響いて意識をそちらに向ける。教室のドアが開いてサクラとイノが入ってきたと思ったらどちらが速かったかで揉め始めた。 しかし思い出したように教室を見渡したサクラがサスケの姿を見つけて顔を輝かして駆け寄ってくる。話しかけようとしたナルトを突き飛ばす女の子のパワーは底知れない。 「お、おはよう、サスケ君!隣・・・座っていい?」 サクラがそう聞くや否や、イノや他の女の子達が集まってきてあっという間に口論になった。がやがやと騒いだまま一向に静まらない競争にサスケが小さくため息を吐く。 「(・・・うざい。隣には既にアリスが座ってるだろ)」 そしてそんな教室の様子を別の場所から見ている者達がいた。 「あれですか・・・今年のbP、bQルーキーのアリスとうちはサスケは」 薄暗い部屋の中、アカデミーの様子を映す水晶を囲む火影と担当上忍達。 殆どがアリスとサスケに注目していたがその内の一人であるカカシはもう一人のある意味注目人物である少年に目を移した。 「うーん・・・うずまき、ナルト、か」
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