巡り会いてT | ナノ

嘘だと思った。これは悪い夢なのだと。

始めに驚かされたのは総合試験の順位発表の時だ。

これまでアカデミートップの成績で天才だと言われて、自分でも周りに負けない自信はあった。

だが一位だと思っていた総合試験の順位は二位。

一位は一年とちょっと前にアカデミーに入ってきてまともに授業も受けてなかった“ナルト以上の落ちこぼれ”と言われている奴だった。

次の日勝負を挑んだら断られて。それでも諦めずに挑み続けて数日後、軽く挑発したらプライドが傷ついたせいか勝負に乗ってきた。

だが──。



「ふん。修行、やり直した方が良いのではなくて?」


「チョウジに絡んできた下忍の男も倒してたしな」



下忍を倒した?

ありえない。認めない、認めたくない。オレは今まで頑張ってきた。

イタチが、一族を皆殺しにしたイタチが憎くて殺したくて──追いついて追い抜くために勉強も修行もしてきた。

それを、たったの一年やそこら勉強しただけの奴に負けただと?認められるわけがない。


────────


あの日の屈辱的な敗北から一週間程が経っていた。アイツは変わらずアカデミーを抜け出している。

それを見るたびに苛立ちが募っていく。


そんなことを考えていたらいつの間にか時間が経っていて、あと数十分で深夜といわれる時間になっていた。

しかし全く寝られる気がしない。


散歩にでも行くか。


適当に着替えて外に出てどこへ行くでもなく適当にぶらつく。今日は満月だから明るい。

しばらく歩いていると住宅街から少し離れた演習場が見えて、通り過ぎようと思ったところで物音が聞こえたため立ち止まる。

こんな時間に修行など物好きがいるものだ。行ってみるか。




気配を消して演習場に行くと木の下に置いてある面が目に入った。これは見覚えがある。最近イラついている原因となっているあの女の物だ。

だがちょうどいい。面を外しているのなら素顔を見てやろうと茂みに隠れてそっと近づいた。

いた。あの動きは体術の修行中か。


「満月で助かっ、た・・・」




時が止まったようだった。


今まで持ち合わせなかった、そしてこれからも持つことはないだろうと思っていた、その感情が、一気に浸透していく。



身体が熱い。


心臓がうるさい。



「ハ、ハハ・・・」



これが一目惚れかと、他人事のように呟いた。


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