巡り会いてT | ナノ

「・・・ヒルゼン様、大切なお話がございます」


三代目に会うため火影邸に来たアリス。

いつも通り迎えてくれた火影を前に、彼女は表情を引き締めてそう切り出した。


「なんじゃ?」

「その、わたくし自身のことなのですが・・・」

「・・・良いのか?話してしまっても」

「はい。ただ、あまり他人に聞かれるのは」


そう言ってアリスは天井を見る。

相変わらずだと、感心半分に息を吐いた火影が天井にいる暗部を下げた。


「ありがとうございます。では少し長くなりますがお聞きくださいませ」


その言葉に火影が頷いたのを確認すると、アリスは大きく息を吸って、吐いて、話し始めた。



***

あるところに一人の王女が生まれた。金の髪と目に大きな魔力、全てが全て母親譲りだった。

しかし女だからか母親に似過ぎたからか、父親からは酷く嫌悪されていて会話という会話は片手で数えられるほどしかない。

そしてそれだけでも立場か悪いというのに加えて魔力が大きすぎて暴走することが度々起きていた。

お蔭で刺客が絶えず幼い頃は守ってくれていた母も王女が五つになった時には離宮へ、八つになった頃には死去。

母の後ろに隠れて泣いてばかりだった王女はその時から180度変わった。誰よりも強く賢く、母の遺言通り理想の王女になるべく刻苦勉励したのである。

母方の一族の能力を継いだこともあって元々伸びていた力は更に飛躍した。

しかしある意味順調だった人生が暗転したのは、十と半年ほどが過ぎた頃だ。大規模なクーデターが起きたのである。

それがきっかけで王女は城を崩壊、実質大国を滅亡に追い込んで逃亡したのだった。


***


「──お分かりかと存じますがその王女というのわたくしでございます」


そこまで言って徐にフードを脱いで面を取る。深い金の髪と双眸に人形めいた容姿。


「改めまして、アリス・ルヴィアンと申します」


しっかりとした口調でそう告げる彼女は、王族出身というだけあって成程大人びていた。──否、王族云々よりも育った過程が理由か。


「・・・あの日、酷い怪我をして生命維持に魔力を回したことや此方に渡るために力を使ったことなど諸々の事情でわたくしの魔力は殆ど底をついてしまいました。そんな時ナルトに出会ったのです。お話しするまでに長い時間をいただいてしまい申し訳ございません」

「いや、こうして話してくれて感謝しておる。辛いことを思い出させてしまって済まない」


アリスは火影の言葉に目を伏せると、少し間をおいて何か質問はないかと問うた。


「そうじゃのう、ではお主の家についてだが・・・」

「父の姓は捨てました。わたくしがあのような仕打ちを受けたのも、お母様がお亡くなりになったのも、全てあの男が仕組んだことですもの」


普段感情の起伏が少ないアリスの憎しみに歪んだ表情。これを見てしまっては父方の家のことなど聞けるはずがない。

少しの沈黙を挟んで落ち着くのを待つと今度は母方の家について問うことにした。誇らしげな顔になる辺りその血を継いだことはアリスにとって良い事なのだろう。


「ロッシュ公国を治める王家にございます。金の目と髪、そして強い魔力が特徴の“国に生きる”一族ですの」

「ふむ、魔力とな」

「呪文を唱えて魔法を発動させる、いわゆるチャクラの役割を果たす力です。詠唱は実力次第で短縮もしくは破棄することも可能ですわ」

「ということは今まで暗部に気付いたのも・・・」

「あぁいえ。それについてはその、殺気を感知することに長けておりまして・・・城で培った、(生きる)要ともいえる能力の一つでございます」


いくら魔法が強くても先手を取られてしまっては不利である。

そもそも刺客は詠唱を短縮・破棄できる兵(ツワモノ)が殆どであって目視して認識してから魔法の展開にかかっても手遅れだ。

そんな状況下で、今とは違い詠唱破棄が出来なかった幼い頃の自分を守るにはどうするべきか。

その答えが殺気感知能力である。


「そうかそうか、それで・・・うむ、お蔭でいろいろと謎が解けた。立ち回りやすくなるのう」


誰を相手に、とは言わないが悪戯っぽく笑う火影。そんな彼にアリスも肩の力を抜いて控えめに笑みを零した。


「本当に、ご迷惑をおかけします・・・」

「気にするでない。それに里の者は家族同然・・・迷惑などと思わんよ。おぉ、そういえばお主の姓を聞いた時から少し気になることがあってのう」


思い出すように言われたその言葉に、アリスは小首をかしげて「なんでしょう」と問う。

火影は少し考えを巡らせてから口を開いた。


「確か、ルヴィアン家についての文献が僅かばかり出回っていたと思うのじゃ」

「なんですって」

「心当たりは?」

「・・・はい。数十年に一度という周期で訪問することはありますが・・・」

「ふむ、そうか・・・いや、そう深刻にならずともいい。数が少ないうえに検証者がいるという話も聞かん。手間を取らせて悪かったな」

「いえ。こちらこそお忙しいところ失礼致しました」


一礼をして身支度を済ますとアリスはドアへ向かう。しかしノブを回して開いたところで不意に呼び止められた。

何事かと振り返れば穏やかな双眸と目が合う。


「外の世界は、楽しいか?」

「・・・はい。学ぶことが多くて充実しています」


アリスは一呼吸おいてそう返すと、執務室を後にした。


prev / next

[ back ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -