あの後改めて自己紹介をしていると玄関が開いて戦々恐々としたナルトが帰ってきた。 「ただいまだってばよー・・・?」 出かける前の冷え切った空気を思い出して逃げたくなりながらも部屋を覗く。が、予想に反してそこには談笑している二人がいた。 思わず口を開けたまま固まっていると二人がこちらを振り向く。 「おぉナルト。帰ったか」 「ちょうどいいくらいね」 「えっと・・・。どうなってんだってば?」 出て行った時の険悪な雰囲気はなく、なんだか穏やかな時間が流れていた。 「良い知らせじゃ。アリスが木ノ葉の一員となった」 「ホントか!?よかったな!アリス!!」 「うるさいわ、ナルト」 「いいじゃねーか!めでたいってばよ!」 一向に静かにならないナルトにアリスは溜め息をついた。 しばらくワイワイと盛り上がっていたナルトだが、不意に何かに気付いたように動きを止めてアリスと三代目に向き直る。 そういえば木ノ葉に住むならアリスもアカデミーに通うのかと、疑問を口にした彼に火影はアリスを見て少し考え込んだ。 「見たところチャクラの動きが感じられんからのう。訓練すれば使えるようになるかもしれんが・・・時期を考えるとナルト達と一緒に卒業は難しいな」 確かにアカデミーの卒業まであと一年半弱しかない。忍という単語を初めて聞いた人間が勉強するには大分・・・というかすでに手遅れだろう。 しかしそのようなことで退くアリスではなかった。 「・・・これが部屋の隅に置いてあったのだけど、アカデミーで覚えるべきことはここにあるもので全てかしら」 そう言って机に積み上がっている古い教科書を指した。今日一日読みふけっていたナルトのお古だ。 「え?あぁ・・・確かに今までアカデミーで使ってた教科書全部だってばよ」 「なら、ここにあるものを全部覚えてしまえば卒業可能ね」 「まぁ、あとは体術とかちょっとした忍術とか手裏剣術とかもあるけど・・・ってアリス?」 「アカデミーに通わなくても独学で構わないわ。ナルトの卒業時期に合わせて、わたくしも筆記試験なり実技試験なりして忍の才能があればアカデミー卒業認定が貰える、というのはいかが?」 自信ありげな言葉に三代目が少し驚いた表情を見せた。 1どころか0から学び始める子どもが何年もかけて勉強してきた子どもと一緒に卒業しようというのだ。 しかしまぁ木ノ葉でも時々そういった天才型の忍はいた。かなり過密なスケジュールにはなるが絶対に出来ないという事はないだろう。 そしてアリスの言い分としては、つい最近まで城で生活しており王女として必要な知識を毎日頭に詰め込んでいた。 それに比べれば全くの新しい挑戦とはいえ基礎であれば不可能なことではない。ということだ。 迷う事のないアリスだがしかし、彼女に決定的に足りないものに気付いていた三代目は深く息をついた。 「・・・やはりアカデミーにいった方が良い。独りでは学べないこともあるのでな」 実は独りでは学べないことが後々の下忍選抜試験で判定材料となるチームワークだということを、この時のアリスとナルトは知る由もない。 「アカデミーには1週間後から行けるよう手続きをしておくからの」 「何から何まで・・・」 「ホッホッホッ! 気にするでない。里の人間は家族同然じゃからな」 そしてその他諸々の話が済むと火影は「いつでも頼ると良い」と残して家を後にした。
[ back ] |