「さて、本戦までの一ヶ月間、どうしようかしら」 予選の翌日、アリスは本を読みながらお茶をしていた。 何もしない訳にはいかないため、とりあえず修行の支度をして玄関に向かう。 時計を見ると九時くらいを指していた。 取っ手に手をかけて、フと昨日サスケの言っていた言葉を思い出す。 ───この一ヶ月間、修行付き合え 「(まったく、わたくしにも色々と予定があるのよ。まぁ、約束したわけではないから問題な───)」 バタンッ! アリスは開けかけていたドアを即行で閉めた。 「おい、閉めるな!」 「・・・なぜ貴方がここにいるのよ」 再びドアを開けると、目の前に立っていたサスケに訝しげに問う。 「ナルトからラーメン代と引き換えで住んでる所聞き出した。昨日はオレから一方的に言っただけで返事を貰ってなかったからな」 「・・・分かったわ。気が向いたら付き合ってあげる」 「助かる。それで、これからどこ行くんだ?」 アリスが「修行」と短く答えるとサスケが「ついていく」と言ったため、二人は演習場へ歩き出した。 「アリス」 「何かしら」 「もう面とローブは着なくていいのか」 今のアリスの格好は暗部のようなモノではなく、普通に忍服だった。 「えぇ・・・もはや今更でしょう」 サスケの前を歩きながら振り返ることもせずに淡々と答える。 暫く歩いてもうすぐ演習場に到着、というところで二人の前にカカシが現れた。 「やぁ、おはよう」 突然の登場にサスケは舌打ちし、アリスは形の良い眉を顰める。 「まぁまぁ、そんな顔するな。それにしても美形二人が歩いてると絵になるねぇ」 「どうでもいいこと言ってないでさっさと要件を言え」 「くだらないことだったら近くの川に沈めるわよ」 笑っていない二人の目を見てカカシは咳払いを一つした。 「あーっと・・・あれだ、サスケはこの一ヶ月間、俺と修行ね」 「は?」 いきなりの発言にサスケが目を丸くする。 「本戦でお前、リー君を倒した子と当たるだろ。このまま普通に修行してたんじゃ勝算は低い。・・・と、いうわけで俺のとっておきの術を、一ヶ月間死に物狂いで習得してもらう」 「・・・どんな術だ」 最初は渋っていたサスケだったが術を教えてもらえると知って心が揺らいだようだ。 「まだ習得できるかどうか分からないけどね。“雷”の性質を持っていたら“千鳥”を教えてやる」 「“持っていたら”か・・・」 少し考え込んだサスケだったが、ここでアリスが「とりあえず試してみる価値はあるのではなくって?」とカカシの意見を推進する。 「あぁ、そうだな」 「そうと決まれば移動しましょう」 「・・・あれ、アリスも来るの?」 「当たり前でしょう。その術、わたくしも興味があるもの」 黄金色の双眸に見つめられて結局カカシは「ま、いっか」と呟いた。 ────────── あれから移動して岩場に来た三人。 「じゃ、まずこの紙にチャクラを流してみろ」 そう言ってカカシは数枚の紙を取り出した。 一枚ずつアリスとサスケに渡す。 訝しげに紙を眺めていたサスケにアリスが「見ていなさい」と言った。 そして顔の高さまで持ち上げた紙にチャクラを流す。 クシャッ 「!!」 アリスが持っていた紙にシワが入っていた。 「この紙はチャクラに反応する材質で作られているわ」 だからチャクラを流せば自分が持っている性質がわかるのよ。 ちなみに“火”なら燃える。 “風”なら切れる。 “土”なら崩れる。 “水”なら濡れる。 そして“雷”ならこの通り、シワが入るわ。 どの性質に属するかは先天的なものであって、自分が持つ性質に合致した術を使うのが良いとされているの。 まぁ、修行次第で異なる性質の術も扱えるようになるけれど。 「上忍クラスになると二つか三つの性質変化を習得しているのが普通よ」 スラスラと説明していくアリスに溜め息を吐いて顔を顰めるカカシ。 「それ全部俺が言おうとしてたことなのに・・・。って言うかアリスってどれだけ性質持ってるの?今の時点で既に“火”“風”“雷”の三つもあるんだけど。しかもコントロールも出来るみたいだし」 「・・・“風”?(んなの使ってたか?)」 「演習の時に見ただろ。避けたのに俺の服が破れたの。あれは風のチャクラをクナイに纏わせてやっていたんだ」 「わたくしのことは良いでしょう。それより話が逸れたわ。サスケ、その紙にチャクラを流しなさい」 アリスの言葉にサスケが「あぁ」と返事をして紙にチャクラを流す。 ボッ・クシャッ 同時に音がした。 「“火”と“雷”ね」 「よし。それじゃサスケ、俺の手を見てろ」 そう言いながらカカシは印を組んで片手を上に向けた。 チチチッと音を立てて掌に電撃が溜まっていく。 「“千鳥”別名“雷切”・・・片手に電撃を溜めて肉体活性による高速移動を併用し相手に突進攻撃を行う。しかし、全力をもって加速し一点集中する“ただの突き”であるため、いくら雷遁の術と体術が優れていてもカウンターの格好の餌食となってしまうという欠点がある」 「なるほど・・・だからその技を教える対象がサスケだったのね。写輪眼を持っているサスケならカウンターを見切ることが出来る」 「そういうこと。とりあえず電撃を掌に集めることから始めるぞー」 その後、細かい説明を受けた二人は早速チャクラを練って印を組もうとしたが、そこにカカシが「ちょっとアリスに話があるからサスケは向こうで練習してくれ」と言った。
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