──休みの日── 「ハァ、ハァ・・・ッ、ハァ・・・」 「あー・・・」 ・・・なめてた。完全に忍をなめてた。 いや、運動そのものをなめていた。 50mが完走できない・・・! 「えーと・・・大丈夫か、アリス・・・」 はしたないと思いながらも膝と手を地面に着く。前方を見ると、あと十数メートルのところにゴールが見えた。 まさか完走すら出来ないとは想定外だ。 「とりあえず、水を飲んで休憩しようか」 彼の言葉に猫面を少しずらして水を喉に流し込む。しばらくして、だいぶ息が整ったから測定を再開したのだが── 「ハァ・・・ハァ、ケホッ・・・うえ、」 腹筋:五回 腕立て:三回 背筋:三回 持久走:記録なし 酷い。とにかく酷い。自分でもここまで出来ないなんて思ってなかった。 外を見てると子どもから大人まで皆走ったり跳ねたりしているから、もっと簡単だと思っていたのに。 イルカによるとこんな結果は前代未聞らしい。トレーニングメニューを一生懸命考えている。 「うーん・・・まぁ、目標は腕立て・腹筋・背筋を五十回で、慣れたら増やしていくのと、ランニングだな」 それを聞いて思わず遠い目になる。勉強よりもこっちの方がよほど大変だ。 この世界に来てからあちらとは全く違う生活方法や知らなかった事柄・名称などの最低限のことを覚えたが、頭を使うことは常日頃行っていたお蔭かそこまで苦ではなかった。 が、反対に筋肉を使うようなことは殆どやっていなかったこともあって基礎からなっていない。 もちろん走り方も無様だと自覚している。 「ハァ…ハァ…ケホッケホッ……ハァー…」 「お、おい。本当に大丈夫か?」 「大丈夫、なわけ、ハァ・・・ない、でしょう・・・!今までっ、走ったこと…ハァ、ッ・・・ないんだから・・・」 息も絶え絶えなアリスの背を、イルカは労わるように擦っていた。 [ back ] |