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春の初め、桜の季節。
この時期は静蘭と燕青、二人の服装がまったく違う風体になる。



「なんだよ静蘭、その暑苦しそーな恰好!」

「お前こそ今から腕丸出しでなんなんだ、バカなのか」



真冬から一枚脱いだだけのような恰好の静蘭。
対して燕青は、もう夏が来たのかと思うほどに肌の露出が多い衣をまとっていた。



「春一番からいきなりあちーからなー」

「馬鹿言え、日中はともかく朝夜と日陰はそこそこ寒いだろ」

「静蘭は寒がりだからな〜」

「お前が暑がりすぎるんだ」

「まあ、俺体温も高いしな!寒かったらくっついてていいだぜ?」



ほれほれ、なんて言いながら抱きしめようとしてくる燕青から半ば本気で逃げる。
燕青のむき身の腕から伝わる温度の暖かさなど、嫌というほど知っている。
逃げることも想定だったのか、追いかけることもなく燕青がふっと上を見上げる。
住んだ空の雲はまだまだ遠い。それでも少しくっきりとした白は青い空と良く映えた。



「春だな〜」

「……そうだな」



感慨深く呟いた声に、小さく同意しながら蕾をつけ始めた桜の木を見上げた。
蕾を揺らした風が少し寒くて身を寄せると、いつの間に回ったのか背後から燕青の腕が回った。



「あったかいだろ?」



耳元でささやくように言われ、たいしたことないと言いながらもくっついた背中はほんのりと暖かい。
燕青の体温が心地よいと感じる季節はまだ、終わらない。






季節計
お互いの体温で季節をはかる





END





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