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※ナチュラルにエイプリールフールの浸透した彩雲国
肌に感じる風は冷たくとも、日差しはだんだんと穏やかになり、彩雲国にも春が訪れようとしていた。
薪割りをする燕青の横で壊れた壁の修繕をしていた静蘭は、ふと思いついたように燕青に視線を投げかけた。
「ん?」
カコン、といい音を立てて薪を割った燕青が、どうしたという風に静蘭を見る。
割られた薪は合わせればくっつきそうなきれいな断面を見せつけて、静蘭の足元まで転がってきた。
それを薪の山に放り投げながら、静蘭は燕青に近づいた。
「静蘭?」
「髪を、」
静蘭の指がサラリと燕青の髪にさしこまれる。
突然の静蘭の行動に驚いた燕青はどうするべきかと固まり、静蘭の言葉を待つ。
燕青の髪をツンと引っ張り、静蘭は小さく口角を上げた。
「髪を切ろうと思うんだ。これくらいに」
「え?」
これくらい、というのが自分の髪くらいだというのはいくら頭が悪くたってすぐに分かる。
いや、それよりも今は静蘭の髪だ。
「お前自分の髪好きじゃねえか!なんで?!」
髪だけじゃなくて自分が好きな静蘭が、自分の魅力を分かっていないはずがない。
もちろん短髪になったって静蘭は綺麗だ。見たことはないけど絶対綺麗。
でも緩やかに波打つ自分の髪が、その容貌を隠す様子が美麗効果を高めていることなんて絶対分かってるはずだ。
燕青がぐるぐると考える。半分以上は静蘭を褒めただけの気もする。
そんな燕青の心の中が読めるかのように静蘭はやはり艶やかにほほ笑んだ。
「お前と同じ長さの髪、というのもいいだろう?」
「せ、せいらん…」
無意識に伸びた手が、静蘭の髪に触る。
自分とは全然違う髪質の綺麗な髪。
互いに髪を触りあっているせいで、距離が近く、いまだ弧を描いたままの静蘭の唇が吐き出す息まで見えそうだと思った。
知り尽くした距離なのに、何故かくらくらする。
「どうせなら髪留めもそろえるか?」
静蘭の腕が伸びて、燕青の後ろ髪の結び目をちょん、とつついた。
更に距離が近くなる。
ああ、駄目だ。
好きの比重が高すぎて、いつまでもこんな寸止め我慢できない。
欲望に忠実に、燕青の腕に力がこもった瞬間、するりと静蘭が離れた
「なんてな。」
「…え?」
してやったり顔で笑う静蘭は可愛い。可愛いが、なんのことだか分からなかった。
唖然とする燕青の顔を見て、静蘭は吹きだした。
珍しく、声を上げて笑う。
「え?静蘭?ま、まさか…」
「やっと分かったか、今日はこんな日なんだから怒るなよ」
「え、えー!うっわ…やられた…!」
ガックリと項垂れる燕青に、やはり楽しげに笑い続ける静蘭。
そんな珍しく無邪気な表情に、騙されたことなんでどうでもよくなるのだけど。
四月馬鹿
本当だったらよかったのに!
END
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