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明るくて親切で、どんな時も前向き。
俺の性格を人に聞くと、おそらくほとんどがそう答えるだろう。
それでいい。俺はそういう人間としてこれまで暮らしてきたのだから。









「しつこくて、諦めが悪くて、ねちっこい」



なんて、それ全部同じ意味じゃね?と聞きたくなるような答えを返してきたのは静蘭。
たぶん、俺の恋人。にしても口が悪い。
そして誰よりも俺の性格を理解している。



10年もの間、数か月一緒に過ごした男のことを考えて生きていた。
しつこい。

「好き」「ウザい」「好き」「消えろ」「好き」「死ね」
辛辣な言葉を吐かれても手に入れるまで追いかけ続けた。
それが静蘭の照れ隠しで、こいつが超のつくほど素直じゃない性格だと分かっていたから頑張れたんだが、それにしても
諦めは悪い。

ねちっこいって何だ?
やっぱり性交のときだろうか。
確かに、ねちっこい、と思う。



身をもって体験している静蘭の言葉だからこそ、真実味が増す。




「否定できねーのが辛い」

「自覚があるならどうにかしろ」

「静蘭しか知らねえけど」




だって俺お前と一緒で外面いいし。と続けると思いっきり嫌そうな顔をされた。




「別に外面じゃない。お前と居る時は素なだけだ」

「そーゆーの外面って言うんだって」




口では冷静に返したけど、心臓は軽く跳ねた。
『俺の前だけ素』って、それ…普通に好きって言われるよりクるものがあるんだけど。

静蘭はたまに微妙な言葉選びで俺を試す。
それがわざとなのか無意識なのか分からないけど、無意識なら魔性だよな。
わざとでも魔性かもしれないけど。




「お前の素は100年の恋も醒めそうなキツさだよな〜」




静蘭はちらっと俺を見て、また窓の外に視線を戻して、数泊間を空けてぽつりと尋ねた。




「醒めたのか?」

「いや、醒めるも何も、素のお前に惚れたから」

「っねちっこい!」




ばっとそっぱを向いた静蘭の耳がほんのり赤くて、可愛い。
それにしても、ねちっこいって結局俺の言動ってことなんだろうか。




「しつこく追いかけたからお前と会えた。諦めが悪いから付き合えた。ねちっこいから今がある」

「……」

「言葉の響きは悪くても、結果はいいことだらけじゃねえ?」

「…お前の性格にもう一つ付け足しとく」

「ん?」

「救いようのない馬鹿だ」




そうかも、って納得してしまう俺。
こと静蘭に関しては馬鹿なことばっかりだ。





「でも、お前の馬鹿さは嫌いじゃない」




……静蘭をヒトコトで表したら『魔性』だよな?
でもそれは、俺だけが知っていればいい情報








恋仲
恋人と他人の視線の違い
欠点すらも愛おしい関係


〜2011/4/5



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