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突然降ってくる雨は嫌いだ。
降り出しから数分、やまない雨を睨みつける。
そんなことをしても無駄なのは重々承知だが、それでもこの雨は嫌いだ。
服はぬれる。髪は張り付く。
水分を含んで重くなった服はぴっとりと体に張り付き、華奢な体の線を強調させた。
もちろん静蘭だって武官だ。それなりに鍛えられた体ではあるし、筋肉だってある。
それでも生まれ持った性質か、隣にいる男ほどに良い体ではない。
どちらかと言わずとも、静蘭は筋肉の付きにくい体質だった。
「ひでー雨。雨宿り…する気もおこんねえなー」
「ここまで濡れると諦めもつく」
絞れるほどに水分を含んだ服を気休め程度にしぼる。
「しょうがねえ。この中歩いて帰ろうぜ」
「言われなくてもそうする」
髪の毛から伝った水が長いまつげにかかり、うっとおしそうに瞬きしながら静蘭は顔をしかめる。
濡れたことでまっすぐになった髪がうなじやらかたやらに張り付く様は、どこか色気がある。
「…やべーな」
「何が?」
「いや…なんていうか…」
くっきりと浮き出す体の線。それは冷たさのせいかほんの少し立ち上がった胸の飾りをもはっきりと意識させた。
可愛く立ち上がる乳首に加え、首筋を伝う水滴、伏せられたまつ毛…。
燕青の意識を持っていくには十分すぎるほどの色香。
往来の道端でうっかり発情してしまいそうだった。
「静蘭」
「だからさっきからなんだ!」
「やっぱちょっと寄り道していかねえ?」
立ち止まった先はいわゆるそういう宿屋の前で。
勘も察しもいい静蘭は、照れたように目をそらしたが、結局伸ばされた燕青の手を握りしめた。
「服が乾くまでの、その間だけだからな」
「ぼとぼとの服が乾くまで、な」
「うるさい」
これだから突然降ってくる雨は嫌いなんだ。
Rain
理性すらも流してしまう
END
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