欲しいのはただ一つ







欲しいのはただ1つ








「あいつは結構最低な男だと思うんだがな」

「そうですね」

「……」





たまたま目撃してしまった。
楸瑛が綺麗な女官から文を受け取っているところを。
何気なく呟いた本心を、隣を歩いていた静蘭に聞き咎められすんなり肯定されてしまう。
今更楸瑛のために弁護するのも嫌で黙る。





「ああ、でも。一応顔はいいですし、将軍職ですし、王からのご寵愛もありますし、藍家で金持ちですからね。」

「そういうものか?」





絳攸は先ほどの女官の顔を思い出す。
お金とか家柄とか、そういうのではなく楸瑛が好きなんだろう顔をしていた。
あんな表情で楸瑛の肩書しか見えていないのらば、互いに可哀想だと思う。
悶々と考えだした絳攸に気づいた静蘭がにっこりと笑顔を向けてくる




「大丈夫ですよ絳攸様。藍将軍の女たらしで無駄に甘い言葉ばかり言っても好きだと言ってくれる方はいますから」

「居るのか!?」

「ええ。私の目の前に」

「っ俺は違うぞ!ああ、そうか!そこの蛙だな!虫に理解されるとは楸瑛らしいな!」





草の上の蛙を指差し笑う絳攸。
その言葉が途中で途切れる。





「…でも、そうだな。最低な男だが…やっぱり…」





弁解しようとした絳攸だが一瞬考えた後、ふっと笑みを浮かべて最低だ、ともう一度言った。
そんな絳攸に静蘭は柔らかく笑い、そうですね。と返す。




楸瑛という人間をしっかりと見ている絳攸だ。
きっと彼にしか分からない、絳攸しか知らない姿もあるのだろうと。







END


――――――――
楸瑛名前のみ…いいのかなコレ

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