きっとそれは大切な




きっとそれは大切な





「藍将軍ったらお上手なんですから。」



華やかな女性の笑い声とともに楸瑛の名が聞こえてきて、絳攸はまたかと眉を寄せた。
どうせいつもの病的なアレだろうと思い、通り過ぎようとしたら女性と戯れる楸瑛とうっかり目があってしまった。
慌てて反らして足早にその場を離れる。
胸のあたりがツキンツキンする。




「絳攸!」

「しゅ、楸瑛?!」



どこを歩いていたか分からない内に目的地へ辿りついていた絳攸の背後から楸瑛の少しだけ慌てたような声がかかる。
驚いて振り返るとやっぱり少し慌てたような楸瑛が目に入った。



「今回は迷わなかったんだね。珍しい。」

「うるさいっ!俺は迷ったことなどないわ!」

「はいはい。君は本当に可愛いね」

「かわっ」



思わず絶句する絳攸に構わず楸瑛は一歩歩み寄る。
そうするとほとんど隙間がなくなってしまった。



「ち、近いぞ楸瑛!」

「ねえ、君なんでさっき逃げたの?」

「逃げてなぞおらん!」

「でも私の顔をみて慌てて歩いていったよね?」




質問系のなの断定口調なのはどうしてだろう。
絳攸は目をそらす。
あの場面をじっと見ているのもかなり変だと思うのだが…。



「別に逃げてなどいない。別に見るものでもないだろう。」

「それもそうだねぇ…」

「だいたいお前はなんで追っかけて来てるんだ?!さっきの女はどうした」

「あの人よりも君の方が大切だからね。」

「な!?」



絳攸の頬が一気に染まる。



「黙れこの常春頭がぁ!!」

「おっと危ないじゃないか絳攸。」



振りかざされた拳を受けることで回避した楸瑛はクスクスと笑っている。




「大人しく一発殴らせろ!」

「殴らしてあげたら代わりに何かくれるかい?」

「は?!」

「私としては君の口付けなんか頂けたら嬉しいんだけどねぇ」

「ば、馬鹿かお前は!」




やっぱり赤くなった絳攸を楸瑛は愛おしげに見つめる。
こうして慣れ合う時間こそがきっと一番大切なものだから。








End


■□■□■□

この2人はこうやって2人で居れる時間が一番大切。……だといいな…。
なんとなく意識し合ってる双花菖蒲でした。

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