痛みを感じないのか






戦う時にその髪は邪魔だろうに

高杉は視界の端でふわりと揺れた黒髪にふと意識を取られた

細身な体のどこにそんな力があるのかと驚くほどの勢いで敵を切り捨てていく

敵をなぎ倒すその動作すら、一葉に納めておきたいほどに美しかったが、高杉の目の前にも五万と敵はいる

振り切るように桂から意識を離した瞬間、今まで見ていた場所で血飛沫があがった




「っヅラ…!?」




天人の血は自分たちと同じように赤くはないものが多い

それならば…

半ば叫ぶように名を呼べば、戦友2人がいち早く反応した

割り込んできた坂本が高杉の敵を引き受け、ちらりと一瞥を送ってくる

高杉は無言で桂の元へ進む

桂はあらかた片付け終わったようで屍の中立っている




「ヅラ!」

「ヅラじゃない、桂だ」



見つけた黒髪に呼びかけるといつもと同じセリフが返され、高杉はほっと息をつくが



「おい、お前ぇ…!」



その傷の様子を見て言葉を失う

聞き手の付け根からざっくりとやられ、止まらない血がしたたっている

立っているのが不思議なくらいの深い傷




「大事ない。見た目が酷いだけだ」




高杉の視線を受けて桂は淡々と言う




「痛みは…」





思わずそう問いかけると桂はふっと苦笑した

そして高杉の脇腹に目を落とす





「お前もだろう」





はっとして視線を落とすと左の脇腹から血が滴り落ちている

高杉は口元を歪める








痛みを感じないのか







そう

自分の痛みより仲間の痛みを感じるから






END


攘夷戦争中(のつもり)


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