「晋助!?どうした?」



1日に2度も訪ねて来るなんて初めてだったので、桂は驚いた顔をして部屋に来た高杉を見た。
上がるぜ、と本人の了承も取らずズカズカと上がり込む。



「あ、さっきお茶を貰ったんだ、一緒に飲もう」

「ああ」



そんな礼儀知らずの客にもしっかりとお茶を出そうとする桂。
相手が高杉だからかもしれないが。
湯呑を受け取った高杉は動きを止めてじっと桂を見つめた。
今まで下心や、勝手な嫉妬を孕んで見ていた桂を”観察”するようにしっかりと見る。



「……晋助?」

「………」

「晋助?……どう、した?」



黙ったまま目を逸らさない高杉に、さすがの桂も居心地悪そうに身じろぎした。
恐る恐るの呼びかけもあっさり無視され、心配そうに顔を覗き込む。



「なぁ、ヅラぁ…」

「うん?」

「テメェ先生が好きか?」



は、っと桂が息をのむ音。
高杉は落胆とも安心ともとれる複雑な表情を取った。
年に見合わない大人びたその表情に、桂の心臓が不可解に跳ねる。



「…大好きだ」

「俺もだ」



それに銀時も。
そう続けると桂は少し笑って頷いた。



「うちの塾生に、先生が嫌いな奴なんていない」

「ああ、」



高杉の短い返事に、部屋に静寂が流れる。
しばらくして、高杉はなあ、と桂に呼びかけた。




「ヅラ、キスしていいか?」

「は?」

「するぜ?嫌なら逃げろ」

「ちょ、ちょっと待て…!俺は…――っうんんっ…!」



体が動くままに体を押さえつけ、形の良い唇を舐め上げる。
目を閉じることもなく、互いに見開いたままの目が、焦点を見失って相手の顔をぼんやりと映す。
高杉の瞳に桂の涙が映ったとき、ようやく戒めを解かれる。
生理的な涙でなく、感情からあふれ出た雫がぼたぼたと畳の上に落ちて行った。




「っな、なんで!お前はっ、そうやって…」

「ヅラ」

「いっつも、ひっ、銀時とばっかり話して、俺だってっ……ちゃんと考えて…っ」

「ヅラ」

「ヅラじゃない!っ桂だ!」



何度もしゃくりあげ、ずっと鼻をすすりながら癇癪を起した子供のように桂の本心がボロボロと吐露されていく。
高杉がもう1度、今度は優しく抱きしめるとぎゅうっと服を握りうつむきながら言葉を続ける。





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