――『小太郎君、君が好きなんだ、付き合ってくれないかな?』

――『どこにです?』

――『そうじゃなくてね。僕と恋人にならないか?ということなんだけど』

――『……俺、男ですよ?』

――『はは、君は本当に天然なんだね。今日はこれで失礼するよ。僕からの告白、考えておいてね』






ことのあらましを説明する桂。
目の前の高杉を見て、言葉を止めた。


怖い。


漠然とそう思った。
友人の顔つきから明らかに雄の表情に。
高杉の纏う空気の何かが変わったことだけは分かった。






「晋す…け?」

「そいつには近づくな今後一切」

「、な、何勝手なこと言ってるんだ!大体さっきも、こ…殺すとか物騒なこと…」





桂の言葉が途中で途切れる。
驚いた桂の、視界いっぱいにひろがる紫がかった黒髪。
唇を覆う、しめった感触。




「…ぅ…、んっ」




初めての行為に、桂が小さく呻く。
しかしその声は甘くかすれていた。
眼尻に浮かんだ涙が、嫌悪からなのか、生理的なものなのか桂には分からない。
ただ、いつの間にか忍び込んできた舌で口内を弄られるとぞくぞくとしたものが背筋を走った。








「、し…」

「…付き合うのかよ」

「え?」

「その男と」




長い口付けが解かれ、微かに息を切らす桂。
高杉の声が妙にのっぺりとしていて感情がこもっていない、微かな恐怖からかいつものように言葉を紡げない。




「あ、そんなこと…考えてな、い。だって男だし、俺は…」




しどろもになる桂の目に、今度ははっきりと涙が浮かんでいた。
高杉は長い溜息をつき、笑みを浮かべた。
その笑顔は仕方ねーなー。という類のものだったが、それでもその顔を見ただけで桂の緊張が解ける。
しかし、ほっとした桂が次の高杉の言葉にむくれた。




「テメェにはまだ早いことだったな」

「なに!?」

「餓鬼にはまだ早ぇーってことだ」

「餓鬼とはなんだ!」




ぎゃあぎゃあと喚く桂。
そういうところが餓鬼なんだと思う反面、そこがたまらなく可愛かった。
フライングで手を出したことを気にしてないのか、忘れたのか
触れてこない桂に複雑な気持ちを抱きながら、もう少しこうやって友情ごっこも悪くないと思う高杉だった。









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