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―数年後―
高杉と桂が河原で出会って数年が過ぎた。
寺子屋に通うのもこれが最後の年だ。
「ヅラぁ、お前髪の毛伸びたんじゃね?」
「ヅラじゃない桂だ。……そうか?」
銀時に指摘され、桂は自分の髪を摘まんだ。
確かにかなり伸びている。
「そろそろ切るか…どう思う?晋助」
「切るなよ。」
「っ痛」
ぐいっと髪を引っ張られて桂が顔をしかめる。
楽しそうに髪に指をからめていた高杉は笑みを深くした。
「引っ張るな!」
「腰くらいまで伸ばしてみろよ」
「こしぃ!?」
高杉の言葉に思わず銀時が突っ込む。
それはいくらなんでも長すぎる。
桂は肩まで伸びた髪を触り、ふっと笑った。
「あと2年はかかるな」
「なに?ヅラは伸ばす気なわけ?」
「…晋助は長い髪が好きなのか?」
軽く質問をスルーされた銀時だが、高杉の答えに興味があったのか髪をいじり続ける彼に目を向けた。
「別に。女みてぇな顔には似合いじゃねぇか」
「とか言って本当は長い髪の女の子が趣味なんじゃねーの?」
「それはお前だろ」
「そうなのか!?銀時」
「ちげーよ」
会話の流れが変わって、桂の髪のことはどこかへ行ってしまう。
そのまま、あの子が可愛いなどの話になりそうなものを、この3人ではそうもいかない。
突然会話を終了して、高杉がばたりと倒れる。
「眠たい…」
「だからといって俺の膝を枕にしなくてもいいだろう」
「うっせぇ。ちょっと貸してろ」
「…うん」
その光景をとなりで見ていた銀時はそれがよく恋人同士でしている、膝枕たるものだと気づいてはいたが桂が何やら嬉しそうなので口を噤んだ。
実際めすらしく高杉に甘えられた桂は少なからず嬉しかった。
銀時ははぁ、とため息をつく。
桂は意味も分からず喜んでいるのだろうが高杉は完全に確信犯だ。
もちろん邪魔する気もないが、居心地が悪い。
「あー。俺、ちょっと用事あるから先帰るな」
「え?待て銀時!…おいっ高杉起きろ」
「じゃーな銀時。また明日」
「おー。じゃーなー。」
いつも一緒に帰っているのだから、と桂は一緒に帰ろうとするがあっさり高杉にとめられる。
もちろん気を利かした銀時はそれいいのだからさっさと足を進めた。
3歩ほど行った所であ、そーだ、と振り返る。
「高杉。お前ヅラのこと家まで送ってやれ」
「何言ってるんだ銀時!晋助の家は俺と反対方向なんだぞ」
「高杉…お前なら分かるよな?」
「てめぇに言われるまでもねぇ」
「晋助も何言ってるんだ?別に1人で帰れる。何歳だと思ってるんだ」
むっとして言い返した桂に銀時と高杉はそろってため息をつく。
「まぁ、俺は帰るから」
「あ、ああ。また明日!」
かなり遠ざかった後、もう1度振り返った銀時は遠目に2人の姿を見ながら俺も苦労するな、と盛大に息を吐いた。
本人だけが気付かない想い
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