「今日から新しい子が入ります。」




松陽先生の言葉に、先ほどの少年が入ってきた。
瞳はやっぱり暗い。



「高杉晋助君と言って、あなたたちと同じ年ですから仲良くしましょうね?」



温厚な笑みを浮かべた先生の紹介に、高杉は1つ頭を下げただけで一言も発しず席へ着いた。
偶然にも隣の席となった小太郎は、横から彼を伺い見た。
綺麗な顔をしていると思う。
同じ年と言われたが、年上に見える。



「なんだ?」

「っ、や、あの。俺は桂小太郎だ!さっき河原で…」

「ああ。」



言葉数が少ないのか
ただ自分と話したくないだけなのか
高杉は途中で話をやめてしまった。
もとより生真面目な性格の小太郎は、彼のそんな態度にいささか不満を覚える。



「人の話は最後まで聞くべきだ!」

「うっせぇな。俺に構うんじゃねーよ」

「本当にそう思っていても言うべきでないことがあるだろう!」

「はっきり言わねえといつまでもうるせぇままだろうが」



険悪なムードがますます大きくなる。
高杉はともかく、普段はマイペースで温厚な小太郎までが声を張り上げているものだから周りの生徒も思わず下がる。
小太郎はなぜだかとてつもなく腹が立っていた。
人の話を最後まで聞かないのなんて銀時も同じなのに、なぜか高杉に関してはすごく腹が立つ。




「あー。もしもし?お2人さん?喧嘩すんのは勝手だけど他所でやれ他所で」

「、銀時」

「あ?」



勇敢にも2人に声をかけた銀時は小太郎のすまなそうな目つきと、高杉の鋭い睨みに迎えられた。



「だから。他所でやれってってんの!ヅラも”清廉な美少年”なんつって呼ばれてんのに、そんな大声あげてっとファンが減るぞ」

「ヅラじゃない桂だ。清廉な美少年じゃない桂だ!」



銀時の言うとおり、真面目で礼儀正しく。
容姿も整っている小太郎は、近所の人や生徒の間で結構な人気を誇っていた。
そのボケた性格も付き合ってみるまでは案外わからないものだ。
自覚のない小太郎は、意味が分からないというように銀時の言葉に突っ込んでいた。
そのため高杉が薄く笑っていることに気付かなかったのだ。



「はい、では授業を始めてもいいでしょうか?」

「あ、すみません松陽先生」

「仲良くするのは大変結構ですよ。でも今はこっちに戻りましょうね」



そして開始される授業。
高杉がぼそりとつぶやく。



「ヅラ、ねぇ…」

「っ、ヅラじゃない!桂小太郎だ。」



小声で言い返すと、微かに笑った高杉がいた。
小太郎は不覚にも驚いて、目をきょとんとさせた。
笑うと結構可愛らしい。




「晋助、と言ったな?」

「そうだけど、なんだ?」

「なら俺は晋助と呼ぶぞ!だからお前も小太郎と呼べ」

「………は、変な奴」



こうして授業の始まる前はあんなに言い争っていた2人が、終わる頃には名前で呼び合っていたためさすがの銀時も驚いたのだった。



名前を聞くまで女だと思っていた




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