―寺子屋時代―


お前の背景が綺麗な蒼色をしていたのを覚えている




「銀時!待てっ。置いて行くな…あーっ……いっ」

「おいおい大丈夫か!?ヅラ」



土手をさっさと下ってしまう銀時を追うように、小太郎が足を速め、草に足を取られて転んだ。
ずざっと派手な音を立てて斜面を転がり落ちてしまう。
銀時が慌てて駆け寄ると、小太郎はころんと仰向けになった。



「ヅラじゃない!桂だ。」

「あー。はいはい。それが言えるってことは大丈夫だな。」

「大丈夫じゃない。手習用紙がぐしゃぐしゃだ」



大丈夫と分かると、途端に冷めた対応をしてくる銀時が悔しくて小太郎は本当に被害にあった半紙を取り出した。



「見ろ!3枚も無駄に……」

「…どした?」



突然言葉を切った小太郎。
その眼はまっすぐに空を見上げていた。
釣られて銀時も見上げる。
眩しい。



「今日の空はすごく綺麗だと思わんか?」

「そーかぁ?」

「物事の美しさのわからんやつめ!…銀時。あれ誰だ?」

「ん?」



なおも空を見続ける小太郎の視界に、1人の少年が目に入った。
隣にいるのは松陽先生のようだ。
銀時と2人首をかしげる。
少年の、何も映さぬ瞳が頭に残る。



「あ」



その少年と目が合った。
思わず声を出して起き上がる。
しかし、その少年はさっと目をそらしそのまま立ち去ってしまった。



「誰だ?あいつ?」

「さぁ」




その少年の正体を知るのは
昼の休憩が終わった後だった。






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