会いたくて



「っ…は、ぁ」

「セイ、もっと僕を見て」

「あ、やっ…ア」




ぐちょぐちょとかき混ぜる水音。
淫靡な喘ぎ声と、粘着質な男の声。




「セイっ!セイ!セイっ…!もうイクよ!中でしっかり飲み込んでね…っ!」




パンパンと打ちつける早さが増し、男の声が興奮に満ちていく。
男は最後にセイの細い腰をぐっと引きよせ、全ての欲望をセイの中に吐き出した。




――嗚呼、汚い




じゃあね、と去っていく男。
見送りもせず、横たわったまま見送るセイ。
もぞりと身じろぐと、どろりと男のの精液が溢れて来た。
汚い、汚い、汚い。
あの男も。自分も。


数日前に見た、綺麗な瞳を思い出す。




「浪…燕青……」




太陽みたいな青年だった。
間違って暗闇の世界へ入ってきたくせに、しっかりと光を与えて帰った青年。
あの輝きが忘れられない。










「忘れられねーんだったら、また会えば?」

「タンタン君は頭の回転も遅いんですね。私の話を聞いてました?」



セイの世話役、いわゆる小姓として仕える蘇芳、通称タンタンの呑気な言葉にセイは深く息を吐く。
入った給料で狸グッズばかり買ってくるから、セイが付けたあだ名がいつの間にか本名よりも知れ渡っている。
普段は馬鹿以外の何物でもないくせに、極稀に的を射たことを言う。



「だって、どこの屋敷で働いてるダレダレか知ってんだろ?会えるじゃん」

「…タンタン君は私がこっそり出て行ったのが店主にバレたら全部責任をかぶってくれるということですね」



セイがにっこりと笑って言えば、蘇芳はぎょっと目を見開いた。なぜそうなる。



「い、いや、さすがにそれは…ほら、あんたと違って俺店主のおっさんに好かれてねえからさあ…」

「私だって別に好かれてません」



それはどうだろう、と蘇芳は少し黙りこんだ。
蘇芳がセイの小姓になる時にしつこいくらい言われたのが、セイの動向をすべて店主に報告することだった。
そして店主はいつも粘着質な目でセイを見ているし、他の妓女よりもセイの扱いは優遇されていた。
ただ、その店主はセイに甘くもあったが、同時に決して手放す気のない激しい執着も見せつけていた。



「ちょろっと抜け出すくらいならバレねーって!」

「……着物の準備すぐに出来ますか?」

「任せとけって!そーゆーのは得意なんだ」



その言葉の通り、蘇芳はいつになく手際よくセイの身支度を手伝った。
そのせいもあってか、数分後には相貌のよく分からない綺麗な一般人が出来あがっていた。




「これなら花町歩いてもセイってバレねーよ…な?」

「まあ花町を出てしまえば私の顔を知ってる人なんて多くないですから、いいです」

「そだな。じゃあこっちは適当にごまかしとくから」

「絶対に、バレないようにしてくださいね」




いや、それは…と口ごもる蘇芳を無視してセイはそろりと町へ出た。
店の畳と無駄に柔らかい布団以外を久々に踏みしめたセイは、明るい日差しの下ゆっくりと門へ向かって歩き出した。

ちょうど同じころ燕青が意を決して花町の門をくぐったことなど、何も知らないままに――。




続く


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もう少し続きます、すみません。




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