出会い


※1話完結形式


ランプの精



※SHの「魔法使いサラバンドのパロ」




魔法のランプが欲しくはないか?





吹き荒ぶ風が砂を巻き上げて若い旅人の行く手を阻む
旅の道連れは1頭の駱駝
砂丘を乗り越えて街へと向かう




「あー。やっべー。今日のご飯どーっすかな…。」



とある砂漠地帯。
旅人出る燕青の覗き込んだ布袋の中はからっぽ。
昨日でため込んだ食糧も全部なくなったらしい。



「また断食生活か…」



憂鬱に呟いた燕青に1人の男が近づいてきた。
胡散臭い笑いを浮かべたその老人は1枚の紙切れを燕青に見せながら言った。




魔法のランプが欲しくはないか?



と。



「魔法のランプって何?」



もっともな質問。
そもそもこのご時世魔法なんてもの言ってくるあたりで胡散臭さ倍増だ。
しかし冷たい燕青の声にも相手は怯まなかった。



ランプをこすると魔神が現れ3つの願いをかなえてくれる



「へえ」



老人の言葉に燕青の口端が上がる。
今は魔神だろうがなんだろうが、魅力的な話だった。




「それ。取ってきたらいいんだろ?」





場所を教える代わりに願い事を1つ譲ってくれ。
そう言った老人に二つ返事で引き受けた。
そのランプは南西にある洞窟に封じられているらしい。
燕青と老人はその入り口まで来た。
片足が悪いという老人の代わりに燕青は洞窟の中へと入った。



「…っさむ」



冷たい空気が背筋を掠めた。
洞窟は意外にも広く、燕青はだんだんと奥へ進んでいく。




「あれ、か?」



どうやら洞窟の奥に辿り着いたらしい燕青は怪しい祭壇を見つけ眉を寄せた。
その上に黄金のランプと古びた絨毯が見えた。




「これ…だよなー」



1人呟きながらランプを手に取ると洞窟が崩れ始めた。



「ぅおっ!こんなの聞いてねぇ!!」



慌てて出口に向かって走り、ようやく出口だと安堵した。
入口にはこちらに手を伸ばす老人の姿が見えた。



「じいさん!手!」



ランプを早くこっちへよこせ!



「え?」



男が叫んだ






忘れ物はありませんか?





暗い闇の中懐かしい声が言う。
――貴方はまだこっちへ来てはいけないわ。やり残したことがきっとあるはず――





「…ぇ…」



目覚めると砂が舞い上がる丘の上にいた。
頭の下に妙な柔らかさを感じ、瞳を開く。



「……え」


青味がかった銀髪をした美しい青年が覗き込んでいた。
どうやら膝枕をされているらしい。
なんかすごく恥ずかしい。



『まさかお前みたいなのが御主人様とはな…チッ。まあ、いい。こっちも何十年も砂の中で過ごして飽き飽きしてたんだ。さあ、願いを言え!叶えてやる』



青年の唇から紡がれる言葉は内容は悪いが、声音はその要望に似合う美しいものであった。
燕青が青年に釘づけになる。




「……」

『?何だ?黙り込んで。願いがないなら呼ぶな』

「いや、悪い。ちょっと状況に頭がついていかなかった。」



青年は首をかしげた。




『このランプが何か分かっていて取りに行ったのだろう?願いがあるから。なぜ驚く?』

「まあ実際耳半分で聞いてたし、ほとんど好奇心だったから実際に魔神?が出てきて驚いた」



しかもこんな美人だし。
という言葉は燕青の心の中にしまっておく。



『…お前みたいな御主人様は初めてだ。今までの奴はみんな欲にまみれた願いを叶えさせて。終りだった。』

「願いを叶えたらどうするんだ?お前は」




―3つの願いをすべて叶えたら、魔神はまた冷たい砂の中で幾千の孤独に震える―
その事実は伝えなかった。



『……元の生活に戻るだけだ。』




魔神の青年は小さく言った。
燕青はその頭をよしよしと撫でる。
暴れる静蘭に燕青は尋ねた。




「お前、名前あんの?」

『…静蘭という。御主人様の名前はなんだ?』



御主人様と呼ぶ割に口調は上から目線であったが。




「俺は燕青。」

『そうか、ではもう1度聞くが願いは何だ?』

「俺の願いなー…。なんかちっさすぎて頼むのも馬鹿らしくなったからまた思いついたら、な」

『……分かった。じゃあ私はランプに戻る。用があれば呼べ』

「あー!そのことなんだけどよ。1人で砂漠って寂しいから一緒に歩かねえ?」

『それは願いか?』

「や、単なる”お願い”。嫌なら断ってもいいぜ」




燕青にそう言われしばし考えた後、静蘭はランプに戻るのを止め、燕青の隣に並んだ。




吹きすさぶ風は砂を巻き上げて若い旅人の行方を阻む
旅の道連れは1頭の駱駝
気位の高い青年が1人…―――。




END




2008.8.30





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