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I
俺の理性なんてそんなに立派なもんじゃねーんだけど。
目の前の光景を半ば信じられない気持で眺めながら燕青は自分の理性がガラガラと崩れる音を聞いた。
「燕青さん、気持ちいいです、か?」
「ちょ、静蘭、待っ…」
夜中になって、突然燕青の部屋を訪れたかと思えば、いきなり燕青の夜具を脱がし、口での奉仕を始めた静蘭。
最初は止めていた燕青だが、静蘭の色香に敵う訳もなく、呆気なく流されている。
静蘭の熱い口内に含まれた燕青のものは、すでに硬く立ち上がり先走りを流している。
含み切れなかったその蜜が静蘭の口の端から流れ落ち、隠微さを放っていた。
「静蘭…出るから口離せ…」
燕青の言葉に、潤んだ目で見上げる静蘭、燕青のものが脈打つ。
静蘭はずるりと口の中からそれを出し、先端だけを口に含み、残りを優しく手で包んだ。
「おい!静蘭!?」
「どうぞ出して下さい……飲みます。」
「っ…」
絶句。
燕青の思考が停止する。
記憶がなくとも、まるで別人のような彼でも、今自分に奉仕しているのは紛れもなく静蘭で。
停止した意識のなか、吐き出された欲望がごくりと音を立てて静蘭の喉を通るのを見ていた。
「…あ、悪い、静蘭…」
「…気持ちよく、なかったですか?」
放心していた燕青を勘違いしたのは不安気に覗きこんでくる静蘭。
「よかったに決まってんだろーが…ったく。もう知らねえぞ!」
「え?」
燕青の瞳が野性的に光り、疑問符を浮かべ見返した静蘭の後頭部に手を回すと荒々しく唇を重ねた。
乱暴に舌を絡めていると静蘭が大きく目を見開いた。
瞳が不安気に揺れている。
「静蘭怖いのか?」
「…怖く、ない。……懐かしい気が、した…」
「!?」
濡れた唇に手を当て、不思議そうにつぶやく静蘭を燕青は力いっぱい抱きしめた。
「そうか…!いい兆しだな…!」
「燕青…」
ゆっくりと燕青の背中に回された腕。
静蘭の記憶が戻る日も遠くはないだろう。
了
⇒
おまけ
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