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「静蘭!」
その呼び声に静蘭はゆっくりと顔をあげた。
なぜだろう。
とても優しい響きがする。
F
「だ、れ?」
「っ…」
掠れて弱々しい声。
そして告げられた言葉。
衝撃が同時に訪れ。燕青は息をのんだ。
「何も、覚えていないのか?」
「私の、過去を知っているのですか?」
「は、静蘭が俺に敬語使ってるなんて変な感じ……」
静蘭に負けないくらい弱々しい声を出した燕青だが、すぐに気を取り直した。
動こうとした静蘭が、腰の痛みに顔をしかめたからだ。
「静蘭!動くな。」
「せいらん…」
「そう。お前の名前。」
ゆっくりと近づき、優しく抱きあげる。
「な…?!」
「動くなって。俺と一緒に行こうぜ?」
どこまでも優しく扱われる理由が分からず、静蘭がきょとんとした表情した。
普段では考えられない無防備な姿に、燕青は別人を相手にしているような気分になる。
腕の中の体は確かに静蘭なのに、心が…違う。
尋ねられた静蘭は、訳も分からぬままゆっくりと首肯した。
どうしてだか分らないが、自分の過去を知っているかもしれないこの男と共にいた方がいい気がした。
そして、どうしようもないほどに心が安らいだのだ。
無意識に、安心を求めるように燕青に密着した。
続く
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