青年――静蘭の苦痛は、家事だけではすまなかった。







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「ふ、…くぅ」



どこか淫靡な空気の流れる一室で、静蘭は邸の主に夜伽を命じられていた。
彼は、抵抗すらまともに出来ず嫌悪しか残らない行為を強いられていた。
その両眼からはとめどなく雫が零れおちる。



「く、んぁあっ」


「もっと私を気持ちよくさせなさい。」


「ひぁ、ん。ぃあぁ…」



ぐちゅり、と耳軸を舐め上げられて静蘭から反射的に声が上がる。




「男との経験があるのだろう?」




訊ねてくる質問にも、記憶のない静蘭はふるふると首を振ることしか出来なかった。
それでも、はっきりとした不快感が静蘭を快感に落とすことなく理性を保たせている。
理性を失くしてしまった方が本当は楽なのかもしれないが。





「お前は私の物だ…」


「ん、や。あ」




ともすれば愛の告白にも聞こえる男の言葉に寒気がする。
彼の持前の矜持が、好いてもいない、しかも同性に抱かれることへの嫌悪を深めていた。
それでも静蘭は記憶を失った不安かから、従順に主との性交を続ける。










「また明日の夜ここへ来なさい。」


「……はい…。」




静蘭を好き勝手扱った後、悪魔の一言を残し、主は部屋を出て行った。
後始末のされていない体を清めようと、静蘭は鈍い痛みの走る体を引きずるようにして歩いた。




「…ふっ…。」



温かい湯に浸かると、もう枯れたと思っていた涙がまたあふれてきた。







続く


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