2のその理由
ホストクラブパロ
※燕青がひどいです(キャラ的に)
『ホストクラブ貴陽』でナンバーツーを誇る人物、静蘭。
女性でも男性でも入れるオープンなそのクラブは、驚くほどに美形率が高い。
そんな中でも静蘭の美貌は群を抜いていた。
容姿だけで言えば、ナンバーワンも思うが儘だろうというほどに。
しかし彼が二番手なのには大きな理由があった。話が面白くないなどではない、彼は非常に博識で社交性がある。
そう、その理由というのが――。
「静蘭さんご指名でーす!」
派手すぎず、しかし高級感の溢れるフロアに静蘭の指名が入る。
細身のスーツを身につけた静蘭が、品のある笑顔を浮かべて指名した男性へ近づいて行った。
「また来てくださったんですね、嬉しいです」
「君の顔を見るためだ、何度だって通うさ」
「そんなことを言っても何も出ませんよ」
つかみどころのない言葉の駆け引き。
3日とあけず現れた男性の客に静蘭は内心ため息をついた。
自分が男受けすると知っているから、男性も入店できるこの店に来たとはいえ、もはや客の9割が男性ではうんざりもするというものだ。
しかもこの男、結構な年だし、スケベそうな顔だちをしている。
「静蘭とこうして話しできるだけで、いいんだ俺は」
なんて言ってるが、その手はどこかを触りたいとでもいうようにワキワキと動いている。
そんな客が酒が入りだして、静蘭に触りだすのは時間の問題だった。
「君のように綺麗な人を見たことがない」
「そんな、褒めすぎですよ〜」
あと、近すぎです。とは思ったが言えない。
男がするりと静蘭の手を取った。
「いいや!静蘭、君は宝石だ!こんなに美しいはd――」
「はーい!!ドンペリ入りまーす!!!」
男が一方的に作っていたしっとりとした空気が一瞬にして霧散した。
ウェイターの恰好をした男の大声によって。
「な、なんだ君は私はいm――」
「え?お客さんドンペリじゃなかった?すみません〜うっかり!あ、じゃあオレンジジュースにします?」
「いや、だk――」
「オレンジジュースはいりまーす!!」
客の男の言葉にかぶせるように燕青がガツガツと話していく。
フロアでサポートについている燕青が突如静蘭の席に割り込んできたのだ。
先ほど客に握られていた手はしっかり解放されている。
そう、この男燕青のせいで、静蘭はことごとく接客を邪魔されナンバーツーに甘んじる結果となっているのだ。
「え?お客様もう帰るんですか?ワーザンネンダナア!」
「帰るとは一言もいってな―――」
「お客様お帰りでーす!さ、さ、静蘭見送って行って」
無理やり荷物を持たされ追い返されそうになる客が、なんとかしろとばかりに静蘭を見た。
そんな客に静蘭はにっこりとほほ笑んだ。
「もうお帰りになってしまうんですね、残念です…。また近いうちにいらしてくださいね」
燕青が邪魔をしていたことなど気付かないような顔をして、さみしそうに言ってのける。
男がデレっと緩んだすきに燕青がぐいぐい入口まで連れて行った。
「ありがとうございましたー!」
ルンルンの燕青に追い出され、客が帰っていく。
フロアに戻った燕青が得意気に静蘭の横へ腰を下ろした。
「見事な手際だっただろ?」
「どこがだ。もっとスマートに邪魔できないのかお前は」
「……相変わらず邪魔すんのは怒んねーんだ」
「怒ってもやるだろ。」
「静蘭が男にべたべたされてんの見過ごせるわけないだろ」
「…勝手にしろ」
ぷい、と席を立った静蘭の顔がほんのり赤く色づいていたことに気付いた燕青は声を出さずに笑った。
終わり
好きすぎてあほ燕青
11月に双玉語りで出た話題