中世洋風パロ





双花洋風パロ






石畳の回廊を悠然と歩く騎士、楸瑛。
向かう先は許されたものにしか立ちることのできない王族たちの住まう塔。
楸瑛はその、許されたものの一人だった。
慣れ切った道だが、今向かっている人物はこの広い自分の『家』ですら迷う、楸瑛の口元に笑みが浮かんだ。
他の部屋とは明らかに造りの違う立派な扉。楸瑛は目的のその部屋をコンコンと軽くノックした。



「誰だ?」

「楸瑛です、よろしいですか?」

「…ああ、今あける」



なぜ一瞬ためらったのだろう、と首をかしげるが、その疑問は絳攸が扉を開けた時点で理解した。
失礼します、と入った後に扉を閉め、鍵を閉め、呆れた顔で絳攸に向き直った。



「絳攸、また夜更かしで勉強かい?」

「う、うるさい!俺にはまだまだ学ぶべきことが多いんだ、のんびり寝てられるか!」



扉で外部から遮断された瞬間、楸瑛は堂々とソファに座り、呆れた眼で絳攸を見る。
第一王子、絳攸とその近衛兵隊長、楸瑛。
公の場でこそそのような立場でふるまう二人だが、生まれた頃から知っている幼馴染でもある二人に実のところかしこまったところなどひとつもない。
近衛兵などをやっているが楸瑛自身もやんごとなき身分の人間。それを捨ててまで絳攸に仕えることを決めたのはもう随分と昔の話だった。
それを後悔したことは一度もないが、絳攸はいまだに楸瑛の出生についてとやかくと心配してくる。
しかし、楸瑛が自分を選び、傍にいることは単純に嬉しかったのか、説得がめんどくさくなったのか(恐らく後者だろう)最近では素を曝せる友人として楽しく過ごしている。

鉄壁の理性と謳われる絳攸だが、案外キレやすい。しかも極度の方向音痴で、自分の城でも迷う始末。
さらには勉学や本に夢中になると寝食忘れて没頭してしまうという、悪い癖もある。

他に王位継承権を持つものが多いこの城の中で、第一王子といえど血の繋がりのない養子。立場的に弱い絳攸のそんな弱みを知っているのは自分と数少ない身内だけだろう。



「でも、ちゃんと寝ないと体に良くない」

「いたって元気だ」



寝ていないのだから当然だが、少しばかり顔色の悪い絳攸。
ソファから立ち上がり、その額にそっと触れた。
指先に触れる感触はいつもより少しザラついている。



「君が気付いていないだけだよ、こんなにやつれて…」

「うるさい、放っておけ!お前は俺の乳母か!」

「う、乳母は酷いな絳攸、こんなに心配してる親友に向かって」



頬に触れたままの手が確かな意思を持って絳攸の首筋をなぞる。



「触るな!」




パシッ、と小気味よい音とともにつれなく叩かれた手をぷらりと振り、楸瑛は痛いなあと笑顔を貼り付けた。
いつもの馴れ合いの延長、照れ混じりのものとは違った完全な拒絶。
いつもひょうひょうと掴みどころのないと言われる楸瑛だが、どうしてか、どんな顔をしていいか分からなかった。



「…じゃあ、私はもう行くけど、ちゃんとご飯は食べるんだよ?」

「……ああ、」



変な空気になった。
いや、したのは自分かと楸瑛がついたため息はさらに場の空気を悪くした。
お互いに何か言いたいのに、言えないような気まずい空気。
どうしていいか分からず、出口へ向かいながら楸瑛は何気ない風を装い声をかける。
通常を取りつくろい、背を向けていた楸瑛は気付かなかった、絳攸が今にも泣きだしそうに唇を噛み締めていたことを。



「俺の、馬鹿…」



バタンと大きな音を立てて再び訪れた静寂の中で、絳攸は触れられた頬に手あてて小さくうめくのだった。

楸瑛に触れられた部分がまだ熱い――。







終わり(?)


楸瑛→←絳攸…かな?
しかし楸瑛は自覚してなくて絳攸が自覚しているという…
また続き書くかもです不完全燃焼度が半端ない








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