繋いだ手






燕青の体温は高い。
それは冬であっても変わらず,静蘭は密かにそれを気に入っていた。
なにせ静蘭の体温ときたら夏だってあまり上がらない。
それが冬にもなれば指先からくる底冷えはかなり嫌いなものに分類された。


「…はぁ」


指先に吐息を吹きかけて温める。気休め程度の行為だが,一瞬訪れる温もりがやめられずに2度3度と繰り返す。
その仕種が静蘭が生来持つ透明感を際立たせ,儚い印象をさらに強めた。
隣にいる燕青の手でも握れば温かいだろうか。
ちらりと横目で燕青を見るとうっかり目があった。


「ん?」

「…何でもない」


誰が握ってなどやるものか。


「寒いんじゃねえ?」

「冬だからな」


恐らく燕青も静蘭の求めているものが分かっている。
分かっていて静蘭に言わせようとしている。
些細なことだが,燕青が時折仕掛けて来るこんな意地悪が静蘭は嫌いではなかった。
駆け引きを楽しむような感覚だろうか。もちろん勝つのはいつだって静蘭だが。



「帰るか」

「え,もう!?」



驚く燕青に寒いからなと返してさっさと歩き出す。
燕青が笑った気配を後ろで感じながら,冷えた手をほんの僅かに後ろへやる。
燕青の温もりに包まれるのを待つように。





繋いだ手
そこから繋がる同じ想い





END


もう暖かいですがフォルダ内に発見したのでUP
静蘭は冷え症だといい…!!












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