いただきます
「静蘭」
「…」
「せいらーん」
「…」
「静蘭センセ?」
「うるさい」
午前中の部活も終わり、正午そ少し過ぎたころの帰り道、隣合って歩く2人。
静蘭は不機嫌を隠そうともせず、大股で先を歩む。
その後ろをついて行きながら、どうしたんだ?と尋ねる燕青の言葉は無視。
それでも事前に約束していた通り、燕青の部屋へ来てくれるのだから律儀なものだ。
「なあ、なんで怒ってんの?」
「怒ってない」
「部活遅くなったから?」
「怒ってない」
「怒ってんじゃん」
冷たい静蘭の態度に怒ることもなく、困ったなあと燕青は頭をかいた。
今日はせっかくのバレンタインデーどうせなら甘い時間を過ごしたい。
一体何が静蘭を怒らしているのか燕青は分からなかった。
◇
「お邪魔します」
「一応片付けたから綺麗だろ?」
「そうだな」
やっぱり不機嫌な静蘭に内心でため息をつきながら、燕青は両手に抱えた紙袋を床に置いた。
(あれ?)
紙袋から出てくるのは綺麗にラッピングされたチョコの山。
マネージャーや友達、もしかしたら本命。
そんな相手からもらった大量のチョコレート。
静蘭の不機嫌の原因はもしかしてこれだろうか。
「静蘭」
「…」
「俺がチョコもらうの嫌だった?」
「!」
相変わらず黙ったままだが、静蘭はぴくっと反応した。
そんな様子に喜びを隠しきれずににんまりと頬を緩ませた。
「妬いてくれたのか」
「別に…貰えるものは貰えばいいだろう!」
「でも嫌だったろ?」
(ああ、可愛い可愛い可愛い!)
燕青の頭がゆるやかに沸騰していく。
「こっち向いて静蘭」
「お前は貰いすぎなん―んんっ」
チョコを貰うのは優しさと面倒さから。
本命ですと渡されたものは断ったし、気持ちが静蘭から動くこともないのに。
「1つでも嫌なんだよな」
「違う…!別にチョコくら、んっ」
嫉妬。やきもち。そんな感情は好きだからこそ沸くもので
向けられる感情が燕青には嬉しかった。
勢い余って押し倒しても静蘭は抵抗しなかった。
「私はチョコなんて用意してないぞ…」
「いーよ。俺だってしてなかったし」
ちゅっと髪にキスを落とす。
いただきます
チョコレートのように蕩けるまで
END
バレンタインネタ
生徒×先生設定が好きらしいことに今更気付きました(遅