いただきます








「静蘭」

「…」

「せいらーん」

「…」

「静蘭センセ?」

「うるさい」



午前中の部活も終わり、正午そ少し過ぎたころの帰り道、隣合って歩く2人。
静蘭は不機嫌を隠そうともせず、大股で先を歩む。
その後ろをついて行きながら、どうしたんだ?と尋ねる燕青の言葉は無視。
それでも事前に約束していた通り、燕青の部屋へ来てくれるのだから律儀なものだ。



「なあ、なんで怒ってんの?」

「怒ってない」

「部活遅くなったから?」

「怒ってない」

「怒ってんじゃん」



冷たい静蘭の態度に怒ることもなく、困ったなあと燕青は頭をかいた。
今日はせっかくのバレンタインデーどうせなら甘い時間を過ごしたい。
一体何が静蘭を怒らしているのか燕青は分からなかった。









「お邪魔します」

「一応片付けたから綺麗だろ?」

「そうだな」



やっぱり不機嫌な静蘭に内心でため息をつきながら、燕青は両手に抱えた紙袋を床に置いた。

(あれ?)

紙袋から出てくるのは綺麗にラッピングされたチョコの山。
マネージャーや友達、もしかしたら本命。
そんな相手からもらった大量のチョコレート。
静蘭の不機嫌の原因はもしかしてこれだろうか。



「静蘭」

「…」

「俺がチョコもらうの嫌だった?」

「!」



相変わらず黙ったままだが、静蘭はぴくっと反応した。
そんな様子に喜びを隠しきれずににんまりと頬を緩ませた。



「妬いてくれたのか」

「別に…貰えるものは貰えばいいだろう!」

「でも嫌だったろ?」



(ああ、可愛い可愛い可愛い!)

燕青の頭がゆるやかに沸騰していく。



「こっち向いて静蘭」

「お前は貰いすぎなん―んんっ」



チョコを貰うのは優しさと面倒さから。
本命ですと渡されたものは断ったし、気持ちが静蘭から動くこともないのに。



「1つでも嫌なんだよな」

「違う…!別にチョコくら、んっ」



嫉妬。やきもち。そんな感情は好きだからこそ沸くもので
向けられる感情が燕青には嬉しかった。
勢い余って押し倒しても静蘭は抵抗しなかった。



「私はチョコなんて用意してないぞ…」

「いーよ。俺だってしてなかったし」



ちゅっと髪にキスを落とす。



いただきます
チョコレートのように蕩けるまで






END



バレンタインネタ
生徒×先生設定が好きらしいことに今更気付きました(遅










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