お見舞いと看病と










※学パロ
静蘭⇒先生
燕青⇒生徒



迷信では馬鹿は風邪をひかないと言うが、どうやら迷信はしょせん迷信でしかないらしい。
燕青から風邪をひいたと連絡を受けた静蘭は木枯らしが吹きつける中、燕青の自宅へと向かった。
こういう時図書司書という仕事は楽だと思う。閉館とともに帰路につけるし残業もない。
他の生徒や教員に見つからないように静蘭はサクサクと道を進んでいった。
燕青は学校からそう遠くないアパートに一人暮らししている。



「入るぞ」



ドアベルを鳴らすことなく、鍵を開けて中へ入る。
生徒の家に対して勝手知ったるというのもどうかと思うが、すでに合鍵を持っている時点で深い関係であることは明らかだろう。




「あれ、静蘭…?なんで?」



部屋の中で一番存在感のあるベッドに横たわる燕青は熱で赤くなった顔で不思議そうに静蘭を見上げた。
まるで来るとは思っていなかったような反応に静蘭は不機嫌さを隠しもせず携帯の画面を見せた。


『風邪。しぬ』


短い二言だけが書かれたメール。差出人はもちろん燕青で、日時は朝の8時ごろだ。
いつも鷹揚として弱音など吐かない燕青のあまりの弱り具合にさすがに心配して来てみたのに、何故来たのかと問われれば怒りもするだろう。
しかし当の燕青はそんなもの送ったかと首をかしげる。



「無意識かも…悪い静蘭」

「……。でも風邪なんだろ、熱は?」

「んー、39度くらい?」



朝に測ったきりだからという燕青に体温計を突き出す。
使われた形跡のない台所の様子からして何も食べていないのだろうか。
風邪をひいたときの対処法として正しいのは寝ていたことだけだと顔をしかめ、静蘭は冷蔵庫を物色した。




「おい、勝手に使うぞ」

「え、作ってくれんの?マジで!?っゴホ、ゴホ」

「大声を出すな」

「ん、サンキューな」



咳の酷い音に心配しつつも、とりあえず病人といえば粥だろうと土鍋を取りだし野菜を切り始める。
ベッドから眺めていた燕青がまるでお嫁さんみたいだとニヤニヤしているのには、幸いというべきか、気付かなかった。
やがて完成した病人料理を差し出すと燕青はがばっと起き上がった。



「静蘭の手料理…やっべえ!超感動!」

「なっ、それではまるで私がいつも料理をしないみたいじゃないか!」

「俺のために作ってくれたってのがいいんだって!」



先ほどまでの咳やダルそうな様子は何だったのかと言いたくなるほどにハイテンションな燕青。
ついつい可愛くないことを言ってしまうのは恥ずかしさからだろう。
うまいを連呼しながら食べる燕青を静蘭は特に何も言わずに眺める。




「ごちそうさまでした」

「ああ…」

「なあ、いつまで居てくれんの?」



ちょっと甘えるような言葉と視線。
静蘭は壁にかかった時計を見上げた。
しかし実際のところ一人暮らしの静蘭には特に帰らなければならない時間はない。
考える時間稼ぎに時計を見た後、静蘭は小さくため息をついた。




「風邪っぴきの生徒を一人残して帰る訳にもいかないだろう…」




もちろんそんなものは言い訳で、燕青だってそれは十分分かっていただろう。
嬉しそうににっこり笑ってありがとうなと抱きつかれた。






お見舞いと看病と
たまにするのも良いものだ





END


学パロ要素が薄い











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