恋煩い
凍りついたような空に白い吐息が吸い込まれていく。
今にも降り出しそうで持ちこたえているような天気と気温に、燕青はさみいと呟く。
「冬だからな」
「おわ!」
独り言に返事があるとは思っていなかった燕青は静蘭の返事に驚く。
寒色の似合う彼は冬が似合うが、見ていると少し寒い。
白い頬に手を伸ばすと触れる前にはたかれた。
「冷たい手で触るな」
「悪い…、って、お前すごい寒いんじゃねえの?真っ白だぞ」
「うるさい」
いつも以上に色のない顔色に懸念するが、やはりというか一蹴されてしまう。
燕青は内心で苦笑しながら今度は隙のない動きで静蘭の体を抱きしめた。
腕に伝わる冷たさに眉をしかめる。
「つめてー…。いつから外いたんだよ?」
「……少し前だ」
「嘘つけ」
「嘘じゃない。私は体温が低いんだ。いい加減離れろ」
「えー。俺とくっついてると暖かいだろ」
「暑苦しい」
天の邪鬼な静蘭に対してわき上がるのは可愛いだとか綺麗だとか、おおよそ頭の悪い感想だったが仕方ないと思う。
十数年の刷り込みは強烈で、燕青はやっぱり静蘭が世界で一番綺麗で可愛いと思っている。
暑苦しいと言われたくらいで離れてたまるかと抱きしめる腕に力を込めた。
「いてっ」
加減なく殴られた。
「…何を笑っている?」
「ん?いや…べっつにー」
静蘭が自分以外に見せない凶暴な面。
目を釣り上げた不機嫌な顔。
全部自分だけが見ているのだと思うと、輝いて見えた。
「ついにオカシクなったんじゃないか?」
半ば本気で言う静蘭。間違ってはいない。
オカシイのは頭と心。もうずっと、静蘭だけしか愛せない。
恋煩い
やっかいで不可解な不治の病
END