辿りつく場所









どうしたのだろう。
最近の自分はおかしい。
相談できる相手のいない彼は窓の外を眺めて考える。
最近、何があった?




しばらく考える素振りを見せていた彼。
ああ、と小さく唇が動いた。
そして囁くような小さな声で1つの名前を呟く。



「ディーノ…」



あの男のせいだ。






辿り着く場所







風紀委員
自らが風紀を壊し、ただの暴力団体と同じような扱いを受けるこの委員の委員長である雲雀恭弥は今日も今日とて機嫌が悪かった。
そもそも彼が機嫌の良い時なんてものは実に珍しいのだ。
闘っている時が一番生き生きしているな、と応接室に居座るディーノが思い起こす。



「……」



輝くような金髪が眩しいとばかりにディーノに目を向けた雲雀だったが、何も言わずまた視線を校庭に戻す。
何をするでもなく、外を眺める雲雀とただ座っているディーノ。
同じ空間に居ながら2人の時は交わってはいない。
ふう、とディーノが嘆息する。
こういう空気は苦手だ。



「恭弥」



呼んでみる。
分かっていたが反応はなかった。
前はこうではなかったのだ。
何かしら反応はしてくれた。



「きょーやー」



でも今は何も言わない。
ある日突然自分の存在を失くしたかのように接されたディーノは酷く焦った。
これでも、可愛い弟子だと思っているのだ。
それ以上の感情ももしかしたら、あるのかもしれない。
色々なことをぐちゃぐちゃと考え、それもまたらしくない、と気分が落ちる。




「ねえ」



雲雀に声をかけられたディーノが、ばっと顔をあげる。
雲雀は扉を指さして言った。



「そろそろ邪魔だから出て行ってよ。」



突き刺すような言葉にディーノの思考が固まる。
しぼり出すよな声が唇から零れた。



「最近…どーしたんだよ。恭弥…」

「どうもしてないよ。」

「だって、なんで俺のことそんなに避けるんだよ…」



前は。
前も確かに話して盛り上がるとか一緒に騒ぐような関係ではなかったが、共に食事をとったりはしていた。
最も、お互い武器を持って対峙している時間の方が多かったが。
それも最近では全くしていない。
勝負すらもだ。



「別に。避けてない」

「っ、嘘つけ!じゃあ何でこっち見ないんだよ…!」

「、見る、必要ないでしょ…」



ディーノの中で何かが弾けた。
部下がいないにも関わらず体が軽い。



「…っ、何…」



雲雀の体を窓枠に抑えつけ、無理やり自分と対峙させるディーノ。
彼自身、なぜこんなに乱暴な行動に出たのか分らないようで瞳の色は戸惑いを浮かべていた。
雲雀はそれを確認する前にディーノから目をそらした。




「こっち見ろよ」



ディーノの口から低い声が出る。
雲雀の体がビクリと震えた。



「……離して」

「見るまで離さない。見ろよ」



しばらくして言った言葉も一蹴され雲雀もだんだんと怒りがつのる。




「なら…力づくでも離させる」



がちゃ、と軽い音を立てて構えられたトンファー。
一瞬で薙ぎ払うように振られたそれが空を切った。
ディーノは見事にそれを避けていた。
手には愛用の鞭が握られている。



「っそこまで、俺と近づくのは嫌か。」

「……」



そうじゃないのだ、と雲雀の心が叫んだことなどディーノが知る訳もなく鞭がビュンといい音を立ててしなった。
あ、と思った時には雲雀の両手からトンファーが離れ中を飛んだ。



「もう、いいでしょう。帰らして」



その際切った手を血を見つめながら雲雀が疲れたように言った。
実際その表情は疲れ切っていた。
寝不足らしく目の下の隈も痛々しい。
ディーノは初めてその様子に気がついたようで狼狽えた。
俺は何がしたかったんだろう。




「悪い、恭弥…俺どうかしてた。お前が俺を見ないだけでイライラしたりして…」

「…別に、どうでもいいよそんなの。」

「でも、そのごめん。血まで流させて」

「こんな物怪我のうちにも入らないよ。」



淡々と返事をする雲雀。
ディーノはようやく気付いた。




「俺、恭弥のこと好きみたい」

「……は?」




たっぷり間を置いて雲雀が顔を上げる。
その際ディーノとの視線が絡まった。
真剣な瞳。真剣な表情。
雲雀の顔が赤く染まっていく。




「ごめん。気持ち悪いか…」

「…っくない」

「え?」

「気持ち悪くないって言ったの!1回で聞いてよ」




赤く染めた顔をふい、と横にずらしどこか恥じらった様子の雲雀にディーノが驚く。
トンファーで撃たれる覚悟くらいはあったのだがこれでは




「んなこと言うと…期待しちまうぜ?」



穏やかに微笑んだディーノ。
直視してしまった雲雀はトクンと胸が鳴るのを感じ焦った。
また…だ。
ここ最近ディーノの顔を見るたびに、胸が苦しくなって軽い高揚感に襲われていた雲雀。



それを初恋だと知るまであとわずか。




End



■□■□■
あとがき

紗紗様
大幅に遅れまして本当に申し訳ないです…!!(土下座)
しかも甘くないですよね;

こんなものですが捧げます。
よろしければ貰ってやって下さい。


というかアレですね。
これだけ期間が空いてもなお気付いてくださったら私嬉しすぎて泣くと思います(笑)
失礼しました。


2008.7.30 氷雨澪






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