平行な関係



「兄……上!!」



暗闇の中劉輝は寝台から起き上がった。


「‥‥夢……か‥!!」


息を荒げ、冷や汗を流し、それでも先程の出来事が夢であったことにホッと息をついた。

その時、部屋の中で動く気配を感じて劉輝は寝台の隣にある剣に手を伸ばした。
カタリと小さな音を立てて、足音が近付いて来て、寝台のある部屋の隣で止まった。

「お上。起きていらっしゃいますか?」

小さな控えめの声で問うてきたのは、紛れも無い兄……否、静蘭の声であった。
夢で聞いた愛しい声に劉輝は頬の筋肉を緩めた。


「起きていますよ兄上」


嬉々として応えると、静蘭は失礼しますと言って寝台に歩み寄る。


「兄上は止めて下さい。誰が聞いているか…」


美しく整った眉を潜ませて渋面を作ると静蘭は弟を窘めた。
劉輝はヘラリと笑み崩れるて、静蘭を招き寄せた。


「兄上」


咎めても尚、自分のことを兄と呼ぶ弟を静蘭はもう1度窘めたが劉輝はただ笑っているだけだった。
何かを堪えたような劉輝の痛そうな笑顔に、静蘭はそれ以上何も言えなかった。


「兄上、一緒に寝て下さい。」


頼んだ劉輝の言葉を一瞬違う意味に取った静蘭は、自らの勘違いに赤面した。
そんな静蘭を見て劉輝は頬を緩めた。
兄が好きだ。
それが許されない想いだとしても、この激情は消せない・・・!!
劉輝は感傷に浸りかけて、止めた。
目の前に愛しい兄がいるのだから、今はその幸せをかみしめたい。
そう思った。





「小さい頃・・・」


寝るまでここにいますよ。
そう言って寝台の端に腰かける静蘭に劉輝がぽつりともらす。


「小さい頃、私が眠れなくて泣いた時…兄上がいつもこうやって傍にいてくれました。」


幼い心にも残った暖かい兄の愛情。
それは今も変わることなく劉輝に注がれている。
あくまで『兄』として。
それはとても嬉しくもあったが、同時に悲しくもあった。
静蘭から見て劉輝は弟。
恋人にはなりえない…。



「兄上がいてくれる時だけは、朝まで目を覚ますこともなく眠れたものです。」


続けて言って、いたずらっ子のように笑う。
静蘭はそれを見て、笑い返すと優しく劉輝の頭を撫でた。


「眠りなさい…劉輝」


「……!!…」



それは小さな声であったが、劉輝は聞き逃すことなく歓喜に震えた。
もう二度と呼んでもらえないと思った声、名前。
幼少のころから誰が呼ぶより、愛にあふれていた。



「兄…上…」


ふいに泣きそうになって、劉輝は慌てて布団をかけあげる。
静蘭の手は、まだ劉輝の頭を撫でていた。




「おやすみ、劉輝。私の可愛い弟…。」



此れは恋ではない、愛情は恋情ではない。



己の抱く感情と、兄が向けてくれる感情が重なるこたがないと知っていても、今夜はゆっくり眠れそうだ。
布団の陰で劉輝は穏やかに微笑んだ。







―終―




●後書

まずは、香奈様リクエストありがとうございます。
長らくお待たせして、本当に申し訳ありません;;
内容も・・・すみません…!!


ございます静蘭は劉輝には甘いといいな〜Vv、と思いつつ書いていました((笑
でも、恋ではなくあくまで弟として。

報われない劉輝が可哀想ですが…;;

ここまで読んでいただきましてありがとうございます♪
感想などいただけましたら幸いでございます。



P・S 書きなおし、苦情等は香奈様からのみ受け付けます。


2007/6/26 氷雨 澪






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