その思いの名は
彼、燕青には愛しい人がいる。
最近まで、自分たちは付き合っているんだと思っていた。
しかし、どうやらあっちにはそんなつもりはないみたいだ。
これは可笑しい。
もし、燕青の思い違いどとしたら、彼は9年近く片思いだったことになる。
彼の恋は、はたしてどっちなのか・・・。
燕青は悩んでいた。
「なぁ…静蘭。俺らって付き合ってるよな?」
悩むのは趣味ではない燕青は、さくっと静蘭に尋ねてみる。
「は?…お前と、誰…?」
静蘭が怪訝そうに尋ねる。
本当は分かっているのだが、状況についていけなかったのだ。
「俺と、静蘭。」
燕青が、きっぱりと答えると静蘭は思いっきり顔をしかめた。
「どこの空中から持ってきた話だ?んん??」
額には青筋が浮かんでいる気がする。
顔はやたらに笑顔だが、目が笑っていなかった。
「だって、俺ら経験済みだろ?…Hの…どぁ…っ!!」
「…///そ、そういうことを言うな!!」
「あ、赤くなるってことは覚えてるんだよな?よかった。……つか、静蘭可愛い…」
熱に浮かされたような口調で、燕青が静蘭に近づいていく。
さっき燕青を殴るために近づいたので、2人の距離はすぐに縮まった。
静蘭が燕青のキスを避ける時間がないくらいに…。
唇を離した燕青は、静蘭に力の限り殴られた。
小気味のいい音が燕青の頭でなり、燕青は火花が散ったような錯覚を覚える。
「〜〜…っっってぇぇえええええ」
涙目になった燕青が、頭を押さえてしゃがみ込む。
それを冷ややかに見下ろす静蘭。
「静蘭ひどい〜」
燕青の文句も聞き流す。
顔中で、否、全身で「ふざけるな」と表しているかのようだ。
燕青はそれを横目で見咎めて、静蘭に気付かれないようにそっと溜息をつく。
彼はこの手の冗談が大嫌いなのだ。
しかし、燕青自身はいたって本気、真面目でしたのだから、こんなに怒られるいわれはないはずだ。
燕青はそう結論付けて、おもむろに立ち上がり、静蘭と向き合う。
「なぁ、ごめんな?」
「・・・・・・」
「静蘭。」
1回目の呼びかけに返事をしなかった静蘭に、もう1度声をかけると、静蘭は冷やかな目で燕青をにらんだ。
「何に、ごめん。だ?」
「勝手にキスしたこと。」
これは、キス、が問題ではなく、勝手にしたことに罪悪感を感じているという意味だった。
静蘭の顔が不本意そうに歪む。
「だって俺、本気で静蘭のこと好きだぜ?」
「嘘をつくな。」
「嘘じゃねぇよ!!…俺、前も言ったよな」
その言葉に静蘭の体が微かに身じろぐ。
あれは燕青と床を共にした時だ。
抱かれている感覚さえもうなく、痛みと絶望に締め付けられていた静蘭を優しく抱きしめながら、何度も『愛してる』と言い続けた彼。
唇に優しく触れて、愛の行為なんだと教えてくれた。
確かにあの時、静蘭は燕青に抱かれるのが好き、だったかもしれない。
それが同情であれ、自分を愛しむその言葉は、静蘭を救っていた。
燕青との行為が終わって残るのは、その言葉の温かさだけだった。
忘れるはずがない。
忘れられるはずがない。
静蘭が唇を噛んで苦しそうな顔を見せると、燕青はそっと近づいていき、その体を抱きしめた。
昔よりはいくらかしっかりしたとはいえ、燕青に比べれば静蘭は細くて、儚かった。
なんでこう俺の庇護欲をくすぐるところは変わらないのかねぇ〜。
燕青の気持ちなど露知らず、静蘭は昔のように燕青の胸板に体を預ける。
「静蘭?」
「…なんだ…?」
「好き。」
慌てて燕青から離れようとする静蘭を引き戻して、静蘭の耳元に口を寄せ、もう1度同じことを言った。
着飾らないその言葉は、意志に反してすんなりと耳に入ってくる。
「好きだ静蘭。」
「も、う言うな…」
静蘭が弱弱しく言う。
「何で?」
意地悪い燕青の問いに、静蘭は黙り込んでしまった。
「返事はくれねぇの?」
「それは9年前もう答えを出した。」
静かな静蘭の答えに燕青は少し考え込み、一泊後に熟れた林檎のように赤面した。
―『小旋風…っ、好き、、愛してる』
行為の間合い、こんな形でしか愛を示せない燕青に彼は淡く微笑んで言った。
―『嫌いな…下人なら、、、こんなことっ、黙ってさせるか…っ』
嫌いの反対は、好きだと言う言葉。
彼はちゃんと恋を成熟させていたようだ。
判明した真実に、燕青はこの上ない喜びをかんじていた。
●あとがき●
これは、カピ様による600hitキリリクとして書かしていただいたものです。
リク内容は「双玉で燕青べた惚れ」でした。
内容がリクと会っているのか怪しいうえ、話がまとまっていないという最悪パターンになってしまいましたが、少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
カピ様のみ、書きなおし、苦情受付いたします。
こんな出来となってしまい本当に申し訳ありません。
読んで下さった方すべてにどうか幸いが訪れますよう。
2007/6/4 氷雨 澪
〜おまけ〜
「静蘭。何であの時付き合ってないって言ったんだ?」
燕青の問いに、静蘭は首を傾げる。
「付き合って、るのか?」
「へ???」
「俺とお前では結婚も出来ないだろ?」
「……静蘭。お前のお付き合いの定義は??」
再び燕青の問い。
静蘭は当然だといわんばかりに自身満々で言った。
「結婚を前提とした健全な付き合い。だ」
それは名家のお嬢様だろう。
そう言いたくなった燕青だが、かろうじて喉の奥に引っ込める。
静蘭には一生敵わない。
惚れた弱みってこういうのを言うんだな〜。
静蘭の笑顔に見惚れながら、なら自分たちの関係はいったい何と言うのだろ、と考えていた燕青であった。
●これで本当に終わり●
つまんなくてすみません;;